「この女、本当に売れんのか?」
「当たり前だ。こいつは純血の東洋人だからな。」
「この女浚うのにかなり苦労したんだ。分け前は6:4だぞ。」
「何言ってやがる!この話持って来たのは俺だ!俺が六割貰うのが妥当だ!」
「なんだと?!」
…声が、聞こえた。頭を殴られたせいか頭がクラクラした。薄っすら目を開けば古びた小屋だ。大柄な男と少し痩せた男が口論をしている。…私、なんでこんなところで縛られて横になっているの?
…あぁ、そうだ。ハンジと久しぶりに内地に買い物に行ったんだ。リヴァイの好みの下着見繕ってくれるって言って。それで、買い物して少し時間早いから色々な服とか見て回って、「女の子らしい買い物だよね」なんて笑っていたんだ。明後日からは壁外調査だからちょっとした息抜きに、と。けれど、そろそろ帰ろうとした時に見知らぬ男に声をかけられたんだ。
やんわり断ってハンジと帰ろうとしたら、男に突然殴り掛かられたんだ。その時に頬が切れたのかな。口の中が気持ち悪い。血の…味。
殴られて、フラついた所を取り押さえられて、ハンジが焦った表情で何か言っていたが聞こえなかった。そこから頭を殴られて、何か薬品を嗅がされて意識はプツリと切れたからわからない。ただ、状況は良くない。丸腰な上に男が二人。薬品の影響かまだ頭はクラクラすりし、殴られたせいで痛みもある。
「だいたい、この女本当に兵士か?ちっせえし、軽かったぞ。」
「なんでも兵士長殿のお気に入りなんだと。」
「あぁ、身体で取り入ったのか。」
…、失礼な。私は普通に兵士として入団したし、普通に戦っている。確かにパワー不足には悩んでいるけれど。
「なら傷物か?…ヤバイな生娘のが高いってのに。」
「だが、かなりの上玉だ。傷物でもかなりの値が付くだろ。…ま、傷物なら俺らが先に味見したっていいよなぁ?」
ヤバイ。話がだんだんヤバくなってる。
私は再び目を開けて男を見た。男二人はもうその目に情欲の色を浮かべてこちらを見ていた。
「お目覚めか。東洋人。」
「…私、東洋人なんて名前じゃないわ。」
「おっと、失礼。だが、どうせ今から意識飛んぢまうんだ。名前なんてどうでもいいだろ?」
「…触らないで。…汚い。」
「気の強い女は嫌いじゃねえよ。」
すぐに自分から足開かせてやると、男は汚い顔をこちらに寄せ、私の頬をガシリと掴んだ。
「せいぜい楽しもうや。」
「や、やめてっ!」
そう言うや否や男は私の服に手をかけるとビリッと嫌な音がしたと思うと一気に私の服を引き裂いた。そして腰からナイフを取り出して私のブラジャーを引き裂き、他の服もナイフでズタズタに裂いていく。その時、男は徐にこちらを見て、私の首筋へと手を置いた。
「どうやら手慣れているみたいだしなぁ?」
そう言われてハッとした。そこは恐らく夕べ恋人であるリヴァイさんが付けたキスマークがあるのだ。ただ、私は…
「や、やめ、…っ、やめてぇっ!」
「ッチ、うるせえな。…オイ!」
「…なんだよ?」
「あの薬寄越せ。…面白い事になるぜ?」
「けど、あれは非合法だぞ?」
「この際、いいだろ?…二人で楽しもうぜ?」
「…仕方ねえな。」
そう言って男はどこからか何か薬品を取り出して私の口へと無理矢理放り込んで私の口と鼻を塞いだ。
「…ふぐっ!」
ごくん。…飲んでしまった。
男を見ればニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて私を見ていた。
よく見れば胸は晒され、下着も申し訳程度にかかっているだけだ。
カッと顔に熱が集まった。やだ、こんな、
「や、やだ、…や、いや、…っ!」
「クク、いい眺めだなぁ。…胸だって充分過ぎる程にデカイしな。兵士さんよぉ。」
「やめて、見ないでっ!」
「今からなーんにも考えらんなくなっちまうから今だけだよ」
「や、やめっ、………っ!ぁ、」
男の手が胸を鷲掴み、もう一人は私の足を開いた。その時だ。ドクン、と中で何かが響いた。ドクドクと心臓が煩い。ぶわりと涙が浮かんで来た。嫌な汗も浮かんで来た。なに、これ…
「…は、や、なに、これっ…や、やだぁっ!」
「お、効いて来たか。…媚薬が、な。」
「な、び、やく?…っぁ、や、やだ、!」
くちゅり、と嫌な音がしたと思えば私の足を開いた男が下着を取り払い私の秘部へと指を入れようとしていた。
「や、痛い!やめ、…痛い!痛いのぉっ!」
「…あ?まさか、お前…」
ひっくひっくととうとう私は泣いてしまった。だって、そんなところリヴァイさんにだって触れられた事なんてないのに。
「おまっ、やめろっ!こいつはこのままのが売れる!」
「…すげえ、処女のくせにドロドロ…」
「お前、マジでやめろって!」
売れなくなるなんて聞こえた瞬間、ガタン!とけたましい音がしたと思い扉の方へと視線をやればそこには扉を蹴り壊した愛しい恋人の姿があった。
「り…、リヴァイ、さん?」
「…てめぇら、死ぬ覚悟出来てんだろうな?」
「…ひぃっ!どうしてここがっ!」
「ああ?んな事より俺の女に手え出したんだ。…ここで死体が二つ出てもさして問題はねえしな。」
男達はさっと私から離れ、窓から逃げようとしたが足がもつれたのか二人して倒れ込んでしまった。リヴァイさんはゆっくりと私へと近付くと身に纏っていたマントを脱ぎ、私の両腕の縄を解くとそっと私の身体をそれで包んでくれた。
「すまない、ミラ。遅くなった。」
「リヴァイさんっ、私…、私っ…!」
ボロボロと流れる涙が止まらない。リヴァイさんはそっと殴られた頬へと手を滑らせた。
「後で全部消毒してやる。…今はそこにいる虫を潰してくるから耳と目を塞いで待ってろ。」
「…リ、リヴァイさん…、」
そう言ってリヴァイさんは掠めるように私の唇を奪うと二人へと向かった。
すると、また扉から人が入って来た。
「リヴァイ!ミラは?!……っ?ミラ!」
「は、ハンジ…よかった。無事だったのね。」
「それはこっちのセリフ!…あぁ、殴られたんだね。可哀想に。」
「…ハンジ。」
よしよしとハンジは私の頭を撫でた。
「リヴァイに言ったらすぐに飛び出したんだよ?憲兵団にも声かけたんだけど、やっぱりリヴァイが見つけたかぁ。…愛だねぇ。」
「あ、それより、リヴァイさん殺しそうなんだけど…」
「…え?」
そう言って慌ててハンジはリヴァイさんを見て一気に青ざめた。
「待って!リヴァイ!殺したらマズイ!憲兵団にも声かけたから殺したらマズイってー!」
「ああ?…ミラに手を出したんだ。死んで当然のクズだろうが。」
「そんだけいたぶったんだから我慢してー!」
そう言ってハンジは慌ててリヴァイさんを取り押さえ、何とか二人の男はリヴァイさんに殺されず、無事に(?)憲兵団へと引き渡した。
帰り道、馬で来ていたリヴァイさんに相乗りさせてもらい、リヴァイさんの腕の中私は泣き止む事が出来なかった。
怖かった。あのまま犯されてしまうと思った。そうしたら、私は死にたくなっただろう。私の全ては、この人に捧げたいと思っていたのだから。
「…すまない、ミラ。もっと、早くに助けられていれば、…」
「リヴァイさんは…悪くない、です。わ、私が…弱い、から、…だから、っ、浚われ…たり、っ!」
「…いい。」
「…ぇ?」
おもむろに馬を止めて、リヴァイさんは私をじっと見た。
「ミラはずっと俺に守られてればいい。」
「けど、私…っ!」
「意見は認めん。…黙って俺に守られてろ。」
そう言ってリヴァイさんは深く深くキスをした。
私はただただ彼の優しさが、唇の暖かさが嬉しくてまた泣いてしまった。
「…帰ったら、全部忘れちまうくらいに抱いてやる。覚悟しとけ。」
そう言ってリヴァイさんは笑ってまた馬を走らせた。
安心からかウトウトとしてしまう。
あぁ、寝てしまう。けれど、もう大丈夫。次に目を開けた時にはきっと、愛しい恋人がそこにいると知っているから。
そう、思い、私は目を閉じた。