花水木/現パロ エルヴィン夢↑の続き
ひっそりとしたマンション街。その中でも極めてセキリュティ性が高く、またそれと比例して家賃も決して安くは無い。前に聞いた時にそれなりに驚きはした。だが、一番驚いたのはこのマンションにした理由だ。
理由が年下の可愛い恋人の身の安全の為とは、リヴァイも変わったな。とエルヴィンは思った。以前のリヴァイなら恋人なんて知った事はない。一緒のベッドで寝るなんてありえない。風呂場なんて使わせる訳が無い。自宅の箸茶碗を使わせるなんて以ての外。車に乗せるなんて論外。恋人だろうが容赦ないその潔癖過ぎるのがエルヴィンの知るリヴァイだった。たが、人は変わるのだ。同棲してる時点で度肝を抜かれたが、一緒のベッドで眠り同じ風呂場を使いお揃いの箸と茶碗が並び恋人の特等席は自身の車の助手席。…本当に同一人物かと思った。挙句にお揃いの部屋着までこの間見つけた。…人は恐ろしいな。


エルヴィンはそう思い、友人の部屋番号を入力し、外来ボタンを押した。これで部屋の住人からロックを解除してもらわなくては客は入れない仕組みだ。


「…はい?どちら様ですか?」

高い、透き通る様な声がインターフォン越しに聞こえた。どうやら噂の恋人が出たようだ。

「私だ。エルヴィンだよ、ミラ。」

「まぁ、エルヴィンさん!リヴァイさんから聞いていますよ。どうぞお入り下さい。」

そう言ってガチャリとロックを解除する音が聞こえた。

「ありがとうミラ。」

「いえいえ。お待ちしておりますね。」

なんとも丁寧な口調だが、ミラは確か今年卒業したばかりと聞いた。そして四月には自分の高校に教師として赴任することが決まっている。
何度かあったことがあるが、綺麗な黒髪が印象的だった。艶やかな黒髪は思わず目を奪われたし、容姿だって悪くない。どちらかと言えば守ってあげたくなる子…だろうか。
小柄な体躯もそうだが、ふわりとした雰囲気の女性だ。おっとりとしていて、怒っているところなんて聞いたことも見たこともない。
リヴァイと喧嘩なんても聞いた事もない。いつだか友人は言っていた。ミラと喧嘩なんてする必要なんてないと。

そうこう思っているうちにもう扉の前にまで来ていて、ガチャリと扉を開ければもうそこにはミラがニコニコと待っていた。

「いらっしゃい、エルヴィンさん。鞄と上着を預かりますね。」

「ありがとう。」

そう言って鞄と上着を預かるミラの手付きが慣れていて思わず感心した。


「…遅かったな、エルヴィン。」

「あぁ、すまないねリヴァイ。少しばかりごたついていてね。」

「いや、構わない。それより酒は焼酎でよかったか?」

「あぁ、構わないよ。焼酎か…いいね。」

「…ミラ、」

「はい。すぐに出せますよ。」

パタパタとミラはエプロンを翻してキッチンへと消えた。エルヴィンはリヴァイに続き、リビングへと向かう。

エルヴィンがリヴァイの元を訪れるのは珍しい事ではない。ただ、リヴァイはともかく年若いミラを気づかい頻繁に来る事は無いがそれなりに来ているし、二人がエルヴィンの元へと来る事だってある。


「…で、話はなんなんだ。」

じっとこちらを見るリヴァイの目が真剣で少し言いにくい。
今回、二人の元へと来たのは突然だった。
『相談したい事がある…。』と言って電話し、リヴァイは当然驚いていた。普段相談事などエルヴィンはしない。そんな彼が切羽詰まった声で言ったのだ。当然リヴァイは「すぐに来い」と言った。そのくらい、重大な事が起きたのだと思った。
空気を読んでかミラは酒も出さずにツマミを作り出した。
チラリとエルヴィンはそんなミラを見てからリヴァイを見た。

「リヴァイは…今幸せかい?」

「…は?」

「あの子と…ミラといる今は…」

「ちょっと待てエルヴィン。話が見えん。」

珍しく思い詰めた表情のエルヴィンから飛び出た言葉にリヴァイは目を剥いた。

「…あぁ、すまない。私としたことが…」

「いや、いいから順を追って話せ。」

事態をすぐさま収拾しようとするあたり、さすが一流企業の管理職は違うと思った。
リヴァイはチラリとミラに目配せをすると、すぐさまミラはお酒と刺身や煮物などを二人の前に並べするりとキッチンへと消えた。


「…教え子に告白されてしまったよ。」

「勇気あんだか向こう見ずなんだか…」

「あぁ、私だってそう思ったさ。だけど…」

エルヴィンは言い淀んでお酒を口に運んだ。
美味い。かなりいい酒をリヴァイ達は用意してくれたみたいだ。

「…あの子があんなに真っ正面から来ているのに私は逃げたくなったんだよ、リヴァイ。」

「…らしくねえな。」

そう言ってリヴァイは酒を飲んだ。
その変わらない飲み方にエルヴィンはどこかホッとしていた。

「…下手をすれば20も違い兼ねないのに。なのに真っ直ぐに言ったんだよ。私が好きだ、と。」

「…いい女じゃねえか。」

「まだ少女だろうに。」

「女ってのは恋した時点で女なんだろうな。だから一丁前に女の顔しやがる。…身体はガキでもな。」

「………。」

言葉を、失った。エルヴィンは思わずキッチンにいるミラを見た。楽しげに料理をしていた。これの他にまだ作ってくれているらしい。その横顔はとても楽しそうだ。


「…あの子に言われてすぐに断れなかった。断るべきなんだ。大人として、あの子が幸せになるためには。私のような中年にはもったいない。」

「…つまり、エルヴィンはそのガキを好きなのか?」

そう言われ、リヴァイを見た。

「…それは、…」

「好みじゃねえなら断ればいい。好きなら付き合えばいい。それだけだろうが。」

「そんな簡単な事ではないんだ!」

「…欲しけりゃ手に入れる。手に入れたら離さない。…結局、それだけじゃねえか。」


そう言い切ったリヴァイにエルヴィンは思わず口を開けて言葉を失った。
自分は…


「エルヴィン…結局年なんてものは二の次だ。二人が幸せなら外野は関係無い。…だろう?」

ニヤリと笑ったリヴァイに思わずエルヴィンは笑った。それは、まるで吹っ切れたように。


「ははは!そう…だったな。いや、そうだ。結局そうだな。」

「…エルヴィン?」

「さぁ、呑もう!リヴァイ!久しぶりに泊まるかも知れないがな。」

「…いいだろう。まぁ、寝るならソファで寝てくれ。」

「ありがとう、リヴァイ。」

そう言ってカランと乾杯した。
そうだった。答えはシンプルだった。結局のところ、あの子からも自分からも逃げていただけだ。大人になるにつれて、世間体を気にするようになって。けれど、違うのだ。自分だって、人間であり男でしかないのだ。
幾つになっても男は男でしかない。ましてやこれから自分は世間体と付き合って寄り添う訳ではないのだ。そう思ったエルヴィンは笑 いが止まらなかった。なんと下らない事で悩んでしまったのかと。

「随分盛り上がっていますねぇ。」

「いや、エルヴィンが一人で笑ってるだけだろうが。」

「けど、よかったです。エルヴィンさん、笑ってくれて。」

「あぁ。…エルヴィン?」

出来た料理をテーブルに並べたミラをエルヴィンは笑ながら見た。その表情はとても晴れやかだった。

「リヴァイ、ミラ。近々私の大切な子を連れて来てもいいだろうか。ミラにはその子と仲良くして欲しいんだよ。」

「まぁ…凄く楽しみです!是非!楽しみにしていますね!…エルヴィンさんの彼女さんですか?」

「近々、私も腹を括って告白しようと思ってね。なぁに、ミラとなら気も合うだろう。」

「頑張ってください!応援してます!」

「あぁ、ありがとう。…リヴァイ、本当にありがとう。覚悟を決められたよ。」

「…そうか。」

「あぁ。まぁ、今夜は独り身最後の夜にしたいね。」

そう言ってエルヴィンはグイッとグラスの酒を飲み干した。
向かいに座るリヴァイもミラもそんなエルヴィンを見て安心したように笑うとさぁさぁまだまだ呑みましょう。と酒を足した。

エルヴィンは酒をついでくれるミラを見た。


「ミラ、君は今幸せかい?」

「はい、とても。…幸せですよ。」

「そうか。そうだな。」

その返事だけを聞ければエルヴィンは良かった。
明日にはきっとあの子は笑ってくれたらいいと、そう思いエルヴィンは再び酒を飲み干した。
クラリとした酔いも今は心地よかった。




















兵長が偽物でしかない\(^o^)/
けど葛藤する団長が書きたかったんだ!











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