兵長と年の差婚 | ナノ


「そうだ。リヴァイさん、私友達に頼まれたんですけどバイトしてもいいですよね?」



喉かな日曜日の朝。リヴァイのシャツに身を包み、そのシャツから覗く艶かしい太腿を見て満足していたら突然言われた言葉にリヴァイは反応する事が出来なかった。

昨夜は明日が日曜日だからと少々ミラに無理をさせてしまった自覚はあった。しかし、それも全ては愛故に。だからこそ無理をさせた自覚はあっても罪悪感はない。

せっかくの休日だからと少しベッドでじゃれあい、自分しかいないのだからとリヴァイのシャツ一枚で少し遅めの朝食を用意してもらい。一般成人男性としては小柄な部類に分類されるリヴァイだが、そんなリヴァイのシャツでもダボダボなミラに思わずムラっと来たがそれを必死に堪え。朝食を食べたらまたベッドに引きずり込もうか。いや、二人でデートでもいいな、などと悶々と思考を巡らせていた最中に聞こえたミラの言葉にリヴァイは珍しくぽかん、としていた。


「リヴァイさん?どうしたんですか?」

「……バイト、か?」

「はい!友達が人足りないらしくて。だからバイトしないかって誘われたんです!」


にっこり。可愛らしい笑顔を浮かべて無邪気にそう言うミラは可愛い。しかし、内容は決して可愛くは無かった。



「なんだ、小遣いが欲しいのか?もしくは欲しい物があるなら…」

「あ、いえお金の問題ではなくてただ単にそのバイトに興味があったんです」

「ほう、何のバイトだ?コンビニか?」


まぁ、大学生のバイトだ。コンビニくらいならいいだろう。ちょくちょくそのコンビニで買い物すれば何とか目が届く。
それにミラも仕事に興味があってやりたいと言うのならリヴァイも止める事は出来ない。しかしミラはそんなリヴァイの期待を綺麗に裏切った。


「いいえ。家庭教師です」



それは何よりも鋭く、破壊力があった。



「か、…かてい、きょうし…だと?」

「はい。何でも人が足りてないらしくて。私が卒業するまでですけど」

「おま、家庭教師って…!思春期真っ只中のクソガキの家で二人きりになる気か…!」



ガタンと音を立てて立ち上がるリヴァイにミラは思わずビクリと肩を震わせるが今のリヴァイにはそれに気付く余裕はない。


「え…いや、男の子担当かまだ分からないですよ?」

「女ならまだしも野郎相手に密着して勉強教えるとか言いながら保健体育の実技まで教える気か…!」

「そんな邪な家庭教師いないですから!」

「とにかく駄目だ。バイトしたいならコンビニとかにしろ。というか就活は…」

「就活は終わったじゃないですか!卒業したら幼稚園で働くって言いましたよね?」

「とにかく働きたいとしても家庭教師は駄目だ」


そう言って駄目だの一言で一歩も譲る気配の無いリヴァイにミラはぷくりと頬を膨らませるがそんなの大した威力は無い。
むしろ彼シャツして頬を膨らませるなんて可愛いだけだと思ったがその言葉はぐっと飲み込み、むくれるミラに手招きすればムッとしながらも可愛らしくリヴァイの側にくるミラはやはり可愛らしい。


「それに家事もしてんだ。家事と学校とバイトじゃあ持たないだろうが」

「後期は授業少ないんだもん…」

「なら休め。しっかり日中身体を休めるのも新妻の仕事だろうが」

「…え?休む事がお仕事ですか?」



リヴァイの言葉の意味が分からず、こてんと首を傾げるミラ。
ここまで言って分からないのかと溜息をつくが、だからこそ可愛いのだとリヴァイは笑った。


「日中休んでもらわなきゃ夜お前を満足に抱けないだろうが」



しれっとそう言ってのけるリヴァイに真っ赤になるミラだが、そんなのお構い無しにリヴァイは言葉を繋げる。


「日中はゆっくり休んで夜はしっかり俺の下で啼く。ミラの一番大事な仕事だろうが」

「そ、そんなお仕事ありませんっ!」

「よそはよそ。うちはうちだ。常識に囚われたら成長はしないぞ、ミラ」

「もっともらしいこと言ってますけど内容アレですよね?下心しかないですよね?!」

「ッチ。少しは学習したか」

「し、舌打ち?!」


今までのリヴァイの教育の賜物か、ミラはほんの少しは学習したらしい。自分好みに育ってきたと喜ぶべきか。それとも簡単には騙されなくなったと言うべきか。今のリヴァイの心情はあきらかに後者だった。


「と、とにかく!バイト、しますから!」

「ほう、俺の反対を押し切ってやる気か?」

「だ、だって!だって!」


必死になってリヴァイに訴えるミラは気付かない。ならば、とリヴァイが意地の悪い笑みを浮かべていることに。



「なら、今から俺が今から出す課題をクリア出来たら考えてもやらんでもない」

「え?本当ですか?」

「ああ。男に二言は無いからな」

「わあ!ありがとうございます!」

「クリア出来たら…な」



意味深にそう言ったリヴァイにミラは気付かない。リヴァイの出す課題が決して生易しい物でない事に。そしてリヴァイは考えると言っただけで良いとは言ってない事に。

無邪気に喜ぶ妻に若干の罪悪感を感じはするが、それでもリヴァイはチラリと覗く太腿を見て喉を鳴らす。
恐らく明日ミラは立ち上がれないだろう。やるならとことんやる。妥協は許さない。それは仕事も恋愛も。
今から出されるであろう数々の課題と言う名の試練を知らずにはしゃぐミラにリヴァイはそっと手を伸ばした。
従わないなら従わせるまで。バイトしたいと言うならその意思を欠片も残さずへし折るまで。
こんな休日もたまにはいいとリヴァイは笑った。






prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -