兵長と年の差婚 | ナノ









「あれー?もう帰るの?」



そう言って顔を覗き込む友人に苦笑いをした。


「うん、今日はお買い物行きたくて」

「あれ?一人暮らしじゃなかった?」

「ううん、半年前から二人暮らしだよ?」


そうなんとなしに言った一言に友人はギラリと目を光らせ、即座に私の左手を掴むと鼻息荒く目を蘭々と輝かせて顔を近付けた。


「うっそ!噂の彼氏とまさかの同棲?!」

「ちょ、近いって…」

「うわあ!見たい!ミラの彼氏超見たい!」

「あれ?見たことないっけ?」

「無い無い!だって彼氏忙しいとか言ってたじゃん!しかもこの指輪だって彼氏からでしょ?」

「う、うん、まぁ…」

「わああ!しかもこの指輪めっちゃ高そうだし!石とかなんなの?」

「確か…ピンクダイヤじゃなかったかなぁ?私、宝石とかあんまり詳しくないから彼に任せきりだったし…」


そう言えば友人は更に目を輝かせて「もっとよく見せて!」とミラが何か言う前に左手の薬指にある指輪をマジマジと見つめてはうわあ!うわあ!と感嘆の声を上げる友人にミラは苦笑いを浮かべていた。



「しかもこの指輪かなり高いんじゃない?」

「うん、私もそう言ったんだけどリヴァイさんが『それくらいの甲斐性はある』って聞いてくれなくて…」

「マジでか!…ね、彼氏って社会人?」

「うん。ちょっと年離れてるんだ」

「いいなぁ、年上の彼氏。タメだと中々プレゼントとか貰えないじゃん?」

「え…いや、私プレゼント欲しくて彼と居るんじゃないんだけど…」

「まぁまぁ!でも随分愛されてるねえ。左手薬指だなんてさ。しかも、それ」

「……?」

「首!首!そんだけキスマーク付けるなんて愛されてる証拠じゃん?」

「う、うそ?!」


いいなぁ、愛されてるなぁ。なんて呑気に言う友人を尻目にミラは慌てて鏡を取り出して首を見れば確かにそこには赤い鬱血痕が。しかも一つではなくそれらは首だけでも数カ所散りばめられている。


「……っ!」

「いやぁ、そんだけ見せ付けられたら私もその彼氏見て見たいなぁ」

「えっと、…また今度ね!」

「あ、ミラ!」


逃げるようにその場を去れば驚きながらも手を振ってくれる友人に軽く手を振った。


















夜8時。最近出来たこの住宅街はわりかし綺麗と言えるだろう。「女性の一人暮らしも安心!安全!」をテーマにしてるらしくこの住宅街にあるどのマンションも最新のセキュリティを取り付けており、セキュリティの種類も様々。
リヴァイが住むこのマンションも中々のセキュリティを誇るマンションだ。エントランスに入るのにキーロックを外さなくてはいけないし、部屋に入るには静脈認証。しかも不審者が発見されれば自動的に警察に通報されしかも登録したパソコンへと不審者映像を転送出来るシステムになっている。
リヴァイ一人で済むには過ぎたセキュリティかも知れない。しかし、可愛い可愛い自分の新妻の為ならば足りないくらいだ。この部屋は二人で決めたがミラが「普通のアパートでいいんですよ?」なんて言うものだからリヴァイはたまったもんじゃない。もしも自分が居ない間に不埒な輩が来たらどうするのかと。お前は可愛いんだから少しは自覚を持って発言しろ。なんて不動産屋の中で言うものだからミラはその場で逃げ出そうとする始末。
二人きりで可愛い可愛い言われるならいいけど人前では恥ずかしいから駄目。なんて可愛らしく言うものだからついついリヴァイもからかってしまうのだ。そんなリヴァイの小さな悪意に気付く事なく素直に顔を赤らめてむくれるミラはやはりリヴァイにとって可愛いのだ。可愛いものを可愛いと言って何が悪いというのか。

ピピッと機会音が鳴り玄関の鍵が解除され、扉を開ければふわりと香る香りに思わず口角が上がる。


「帰ったぞ、ミラ」

「おかえりなさい、リヴァイさん」


そう言ってパタパタとキッチンから出て来た可愛い妻に思わず笑みを浮かべた。可愛らしいその白いフリルの付いたエプロンなんて今時…。と思っていたがミラが着ればこんなにも似合うのかとリヴァイは舌を巻いた。

パタパタとやって来たミラはリヴァイからスーツの上着と鞄を受け取るがその表情は決して穏やかとは言えない表情だ。しかし、怖い表情でもない。


「…どうした、なんかあったのか?」

「むう、わからないんですか?」

「分からないから聞いてるんだろうが」
しゅるりとネクタイを外し、寝室へと足を運ぶリヴァイに律儀に付いて来るミラ。
寝室に入りミラは上着を掛け、しっかりファブリーズをかけてからハンガーに上着をかけた。
その間にリヴァイはテキパキと部屋着へと着替える。
部屋着へと着替え、ミラへと向き直るがやはりミラは頬を膨らませていた。


「だから一体なんだ」

「何だじゃないです!コレです!コレ!」


そう言ってミラが指差したのは首にあるキスマーク。それを見てリヴァイはああ、それか。とアッサリとした反応を示した。



「ああ、それか。じゃないです!私ずっと気付かなくて帰りに教えてもらって初めて気付いたんですからね!せめて見えない所にしてください!」

「いいじゃねえか、いい虫除けになる」

「こ、こんなに付けてたら恥ずかしいです!」

「自分の嫁を可愛がって何が悪い」

「そ、それは……」


悪い、なら気を付ける。そんな反応を期待していたのになんとリヴァイはそれの何処が悪いのだと真顔で言うものだからミラはつい口ごもってしまう。そんなミラに容赦無くリヴァイはジリジリと詰め寄り、そんなリヴァイから離れようと後ずさるミラだが狭い部屋の中では逃げれる距離などたかが知れている。あっという間に壁へと追い詰められてしまう。


「なら、ミラはそんなに俺の事を好きでないって事か…」

「ち、違います!」

「なら何が悪い。自分の嫁を好きなように可愛がっているだけだろうが」

「だ、だから、せめて…見えない所に…」

「見えなきゃ意味無えんだよ。そのくらいは察しろ」

「だ、だって、恥ずかしい…」



さっきの勢いは何処へやら。すっかり顔を赤くし、困ったようにリヴァイを見るミラ。しかし、これにはリヴァイも譲らない。


「せめて、一つだけにしてください…」


そう顔を赤らめて言うミラにリヴァイはほう、と笑った。


「一つならいいんだな?」

「ひ、一つです。一つだけ、なら…」

「なるほど。なら、首は一つだけにしてやる」

「首…は?」

「ああ。首は、な」



そう言ってニヤリと笑うリヴァイにミラの顔がひくりと引きつる。
そんなミラなどお構い無しにするりとミラの背中に腕を回し、柔らかくも張りのある尻を撫でればビクリと震える身体。


「ちょ、まだ、お風呂っ」

「んなの後でまとめて入ればいいだろうが」

「ま、まとめて?!今、入れますから!だから、せめてお風呂に……ひぁっ!」

「まぁ、まともに立てるなら一人で入ってもいいがな」

「ちょ、だから、お風呂に…っ!」

「ッチ、うるせえ」


そう言ってやわやわと撫でていた手を離すとガバリと服の下から背中のホックをパチリと外すとその無防備な胸をやんわりと掴めばたちまち抵抗が無くなる。


「……ぁ、や、…っ!」

「ほら、さっきまでの勢いはどうした」

「ず、ずるいっ!」

「何とでも言え。後で文句は聞いてやるからとにかく大人しく喰われてろ」

「……ぁ、…もうっ!仕方ないですね…」


そう言って身体の力を抜き、ゆっくりとリヴァイの背に腕を回すミラにリヴァイは一人ほくそ笑んだ。


「せっかく作った夕飯、冷めて美味しくなくなってても知りませんからね」

「ミラの料理は基本美味いから大丈夫だ」

「もう、乗せるのが上手なんですから」

「いや、本心なんだがな。まぁ、とにかく今は…」

「……ん、…」

「喰う順番が入れ違いになっただけだからな」


そう言って噛み付くように唇を重ねればすっかり蕩けきったミラはそっとリヴァイに身を委ねる。

その後、がっつり頂かれたミラが一人で立てる訳もなくしっかりとリヴァイに抱えられながらお風呂に入らされた挙げ句首に盛大なキスマークは一つだったが、背中や鎖骨等には噛み痕吸い痕が散りばめられ、首だけの方がまだ良かったと後悔するのは少し後の話。
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