兵長と年の差婚 | ナノ


「……はあ、…」


思わず溢れ出た溜め息にミラは全く進まない家事にまた溜め息をついた。
理由は分かっている。そしてそれはただの自分の考えすぎだというのも。


ミラの通う学校には可愛らしいテラスがあってそこは女子学生にとても人気のスポットだ。
ミラも例にもれずそのテラスはお気に入りの場所で、天気が悪くなければほぼ毎日友人とランチを摂っていた。
今日もそのテラスでお弁当を食べていた時の事だった。ミラが毎日作るお弁当の中身の殆どはリヴァイが好むものだ。ただ、そればかりでは栄養が偏るからと野菜も入れて彩り豊かな内容になるようにと心掛けていた。友人には「毎日よく作るね」と言われているがリヴァイの事を思えばお弁当を作るくらい苦ではない。むしろ美味かったと言われて渡される空の弁当箱に思わず笑みが浮かぶ。
そんな時後ろから聞こえた声にぴたりとミラの箸が止まってしまった。



「…なんで女ってああも面倒くせえのかな」

「お前が反省しねーからだろ」

「けどよ、浮気の一つくらい寛容になれって話だよな」


何の気なしに放たれた一言にミラの箸はぴたりと止まった。


「大体あいつもきゃんきゃんうるせーし。
浮気は浮気で本気じゃねっての」

「いや、浮気すんなよ…」

「けどよ、毎日同じ女なんて飽きねえ?男ならさたまには違う女とヤりてえじゃん。女ももうちょっと理解しろって話だよなー」


そう言って呆れたように笑う男にミラは見る見る顔色を無くしていく。
それを見かねた友人が


「ほんと、男って…。ミラは気にしちゃダメだからね。男がみんなああじゃないんだから!」


そう言ってミラを元気付けようとするもミラの頭には浮気と飽きるの二つのワードがグルグルと頭を駆け巡った。
その後講義がある友人とはその場で別れこの後講義が無いミラは真っ直ぐ帰宅したのだがどこをどう歩いて来たのか覚えていない。
リヴァイに限って浮気なんてあり得ないし飽きている様子も見られない。飽きているならば昨夜のあの行為だって理由が付かない。
けれどもし浮気をしていたら?
もしミラに本当は飽きていたら?
ミラはリヴァイしか知らないしこれから先もリヴァイだけでいいと思っているけれどリヴァイはどうかなんて分からない。
そしてこれはただの杞憂であり、本当に浮気を疑っているわけではない。けれど気になったらあれこれと気になりだして止まらず、中々進まない家事にミラは溜め息を吐くしか無かった。


「リヴァイさん…私に飽きてないかな。大丈夫かな…」


そう言ってゆっくりとアイロンをかけてまた溜め息。


「やっぱりたまには私から誘わないと飽きられちゃうのかな…。けど、恥ずかしいし…」

「だけどやっぱり他の人に取られたくないし…。って、リヴァイさん浮気してるわけじゃないんだから!…けど、浮気なんて私許せる寛容さなんて…無いかも」



きっと浮気なんてされたら…。
想像すればする程じわりと涙が浮かぶ。



「すまん、ミラ。俺はこいつと一緒になりてえんだ」


そう言って見知らぬ女がリヴァイに甘えるように擦り寄っている姿を見たら。
きっと平静ではいられない。
沢山泣いてしまうしきっと普通の生活なんて送れないだろう。


「やだっ…、ぜったい、…うわ、き…やだぁ…っ、」


まだした訳ではないのに想像しただけで泣けてしまう。ボロボロと流れ出る涙を止めることが出来ず思わず手元にあったリヴァイのハンカチを手にする。そして密かな決意をする。



「きょ、きょう、は…、絶対…私から、誘うんだから…っ!」



そう言ってぐっと握った握り拳は固く、その決意の程が伺える。



「……何言ってんだ?」



思わず溢れた言葉は幸いにもミラには聞こえなかった。
たまに早く終わった日にサプライズでケーキでも買って二人でいちゃつきながら食べようかと思い、静かに入った家でまさか嫁の一人劇場を見ることになるとは。
静かに最初から最後まで見ていたリヴァイは浮気なんぞといつ口を挟むかと思っていたがまさかミラがリヴァイにとって好都合な方向へと思考を切り替えてくれるとは予想外だった。
さあ、どんな風に誘ってくれるのやら。
まだまだ幼くもその成熟した身体でどこまで頑張るのか見ものだと思いながらさあどのタイミングで入ろうかと伺い、舌舐めずりする。
上に乗ってくれるかコスプレしてくれるかいやらしい言葉で誘ってくるのか。
どれも普段のミラならしないことでも今日ならばと夜への期待を胸に落ち着き始めたミラに声をゆっくりと、優しいかける。








prev next
back


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -