兵長と年の差婚 | ナノ


「こんな感じ…かな?」


そう言ってふわふわと笑うミラ。
キッチンに広がる甘い香り。来たるバレンタインに備えてミラはリヴァイの居ない昼間にチョコレート作りに勤しんでいた。
しかし、リヴァイはあまり甘い物を好んで食べない。お弁当にいつも入れている玉子焼きも甘さ控えめだ。
そんなリヴァイにバレンタインに何を作るかで頭を抱えたミラだが、やはりせっかくのバレンタインなのだからチョコレートを使った何かを送りたいと思い、練習していたのだ。


「ふふ、初めて作ったけど上手くいったなぁ。後は中でチョコレートが固まらないように…」


そう言って仕上げを手早くし、早速フォークを刺した。
柔らかなスポンジにさっくりとフォークを刺すととろりと中から暖かなチョコレートソースが零れ出す。その様子を見てミラは更に笑みを深くした。


「わぁ!上手くいった!フォンダンショコラ!」


甘さ控えめの、リヴァイでも食べられるようにと考えた末に決めたフォンダンショコラ。
ふわふわのスポンジの中にはほんのりラム酒を効かせたチョコレートソースが入っており、皿に施されたシュガーパウダーやベリー達がさらにバレンタインらしさを醸し出していた。



「ふふ、喜んでくれたらいいなぁ」


去年も確かにバレンタインに贈り物はしたが、結婚はしておらずまだ恋人同士という関係だった。だから忙しいリヴァイを気遣いミラはチョコレート等の食べ物は基本的に渡すことはしなかった。何せあの潔癖性だし、リヴァイは意外と食べ物にうるさい。
あの店の野菜は農薬臭い。あそこの肉屋は肉が生臭いなどなど。だからだろうか。リヴァイとのたまのデートで食事に行けば見たことのないようなホテルのディナーや見るからに一般人は入れないような御座敷へと連れて行かれることが多かった。そんな人に庶民的な食べ物を贈る勇気はミラには無かった。
だからこそ去年のバレンタインは手編みのセーターを贈った。

そんな二人にとって今年のバレンタインはある意味特別なのだ。お菓子を作るミラにとっては殊更特別に感じている。


「早く明日にならないかなぁ…」


そう言って暖かなチョコレートソースを掬い、舐めてみればほんのり大人の味。
ミラは成人こそしているが、酒や煙草はしない。それらは全てリヴァイが止めており、またミラに変な関心を持たせないようにしていた。



「早く帰って来ないかなぁ、リヴァイさん…」


今か今かとうずうずしながら扉を見つめるミラは純粋な目をしている。そんなミラは知らないのだろう。今か今かとぎらついた目をした男が帰って来てあわよくばチョコレートプレイをしようと目論み、明日の準備をしているリヴァイの姿を。





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