兵長と年の差婚 | ナノ


「風呂空いたぞ、ミラ」

「あ、はい。なら私お風呂入ってきますね」


そう言ってしゅるりとエプロンの紐を解き、部屋を出るミラを尻目にリヴァイはどかりとソファに座り、髪をガシガシと拭く。
そんな時ふと目に入った携帯電話。二つ仲良く並んだ白と黒のお揃いのスマートフォンはまるで二人のよう。そんなスマホだが、黒いスマホは未だに真っ暗なままなのに対し白いスマホはカチカチとメールか着信を知らせるランプが点灯している。言わずもがな黒いのがリヴァイのであり白がミラの。
「リヴァイさんとお揃いで嬉しいです」と言ってはにかむミラにこんなので喜ぶのならお安いものだとそれ以来リヴァイは積極的にミラとお揃いにしていた。
お揃いの箸に茶碗。マグカップにハンカチ。どれにもミラは頬を染めて喜びその度にリヴァイを喜ばせた。
高級ブランドや宝石を望まない年若い新妻に何をしたら喜ぶのか頭を抱えることの多かったリヴァイだが、

「高級なブランドもアクセサリーも要りません。リヴァイさんと同じ物を見て、触れて笑っていられたらそれだけで幸せなんです」

そう、笑って言うミラにリヴァイは無欲過ぎると言うが、それがミラの最大の我儘なのだと言うのだからなんとも可愛いらしい。

そんな、ミラの携帯もといスマホが震えはしないが、光っている。
普段スマホ弄りなど滅多にしないミラ。主に行き帰りの連絡をするくらいか、スマホアプリにある料理アプリを見て献立を考える材料ににするくらいである。そんなミラがにこにことしながら最近はスマホを弄る事が多くなった。
同世代の友人を持つのはいい事だ。ましてや大学時代の友人は一生の友人になるし、他人からの刺激がミラの成長に欠かせない事だってある。そう、それが女友達なら何もリヴァイの言う事はないのだ。
にこにこと笑いながらメールをしている相手が男だったら。ざわりとリヴァイの中で黒い何かが波立つ。



「…ッチ、早く上がってこい…!」


人間気になり出したら止まらないもの。イライラとスマホを見つめ眉間に皺を寄せる。
見るべきか見ないべきか。
一緒に住む男女の最低限のマナーすらリヴァイの頭からはすっかり抜け落ちていた。
今リヴァイの頭にあるのは見るか見ないかの二択のみ。



「……ッチ、だから嫌だったんだ」


携帯を持たせるのは。と吐き捨てるようにリヴァイはそう言うとガシガシと頭を掻いた。
しかし、ミラの年齢で携帯を持たない等考えられないし、まさか持たせなくない理由を言えるわけが無い。
早く上がってこい!と念じつつリヴァイは白と黒のスマホを睨みつけた。
未だに沈黙を守るスマホを手にし、中を見る事はしない。しかし、


「風呂から上がったら、覚悟しとけよ…」


ゆらり、と。怒りの矛先は変わり何故か確認もせず名も姿も想像の域の男へと向かう。
その中身を洗いざらい話させてどうぐちゃぐちゃにしてやろうかとリヴァイは目を光らせた。

prev next
back


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -