ネタバレ小説
はぁ・・・・・・、本当、見上げたヒトの子だよ、お前は・・・。
―――――パチン
まさかベリアルがこんなアクティブな奴だとは思わなかったよ。
まぁ、起きたことをぐだぐだこね回していてもしかたがないな。
何度時を戻しても起こることなら、なにか彼にも考えることがあるんだろ。なんせ彼は私達には理解も及ばない向こうの世界でさえ造ってしまわれたんだからなぁ。
・・・こんな面倒なことになるなら造らなかったら良かったのに・・・・・・ろっとぉ、こっちの話だ。
さて、肝心なあいつを救う方法だが・・・
どうしたもんかね。
正直言って頭が回らないんだ。別にあいつが心配でという訳じゃないぞ?断じてな。
さっきから絶えず耳に届く奴の嗚咽が私の思考を鈍らせるんだ。
なにをさっきからぐずぐずと、五月蝿いものだ。
そもそもお前が堕天したくせにあいつの親友面して妙な茶番に付き合わせたのがいけないんだろう!なのに助けもせずうちひしがれるだけ・・・。私はあいつを助け出す方法をずっと考えてると言うのに・・・・・・ん?
・・・・・・・・・
・・・そうか、いいことを思い付いた。
奴を使おうじゃないか!
ふっへへ、なんて名案だ!
それじゃあ早速奴をけしかけようか。
奴のことだ、たかが堕天使と天界のヒトとの間でも持続してると信じている『友情』とか言うあいつと関係を保っていたいだけの言い訳を利用してやれば喜んで助けるというだろうさ。
それに、あいつの仕事も減るしね。
いや、増えるのか?・・・まぁいい。
―――――パチン
はぁ・・・・・・、これで何度目だ?
何回奈落の底に落ちたら気が済むんだ一体。
なんで私がお前なんかの為に戻してやらなくちゃならないんだ。私はあいつのサポート役なんだがな・・・。
所詮お前には死よりも過酷で残虐な制裁が加えられるというのに。
・・・ん?今度はなんだ、爆発死か?面倒だなぁ、これで73回目だ。
・・・ろっとぉ、まだ意識があるのか。
・・・なんだ、その目は・・・?まるで絶望を前にしたような瞳だな。
死と直面したから、という訳ではないようだ。・・・私の考えでもわかったというか?
ん?お前の言っていることはわからんよ。
それに、お前が自分の結末に気付けたとしても、74人目のお前はそれがわからない。ふっへへ、なんて痛ましいんだろうなぁ?
お前の未来は決まっているんだ。
・・・うん?・・・・・・、あいつは例え死ぬ前だって曇りの無い、ただただ申し訳なさそうな目をするよ・・・。
・・・だから私はお前が嫌いなんだ。
死の間際でさえあいつを追い求めるのか。自分がどうなるのか気付いていながら、あいつを気にして、繋ぎ止めようとするのか。
お前がいくらあいつに執着しようが、あいつはお前の元に戻りはしない。
あいつは彼に愛され、彼を敬愛している。
堕天し彼を裏切ったお前なんぞに堕ちる訳がないのはお前だってわかるだろう?
わかっていて何故そんな目をする?
堕天使の分際で・・・
―――――パチン
はははっ、よくやったじゃないか!
これで地上界に戻るだけな訳だが・・・、さて困ったな。
ベリアルが起きてしまったようだよ。
あれもしつこいからなぁ、このままではタダで帰れないだろうな!
まぁお前も、イーノックを救えて嬉しいだろう?
・・・さぁ、私にさっきベリアルから電話がかかってきたよ。
携帯電話っていうのはな、相手からかけてくるのを待つばかりの道具じゃないんだ。
ふっへへ・・・思い出すなぁ、お前が堕天した時のことを。
お前がイーノックの周りをうろちょろするようになって正直邪魔でしょうがなかったよ。
何故お前にイーノックの笑顔を見る権利がある?イーノックは私と彼と共に生きるのに、何故そんなしがない天使なんぞに己の昔を話す?何故私には見せない表情をする?何故いつもは固く閉ざされた口から滑るように声が紡がれる?
・・・お前が彼の手を離れた理由は、地上界への憧れだったなぁ、
表向きは。
喉を失ったお前には、
本当の理を吐き出すことはできない。永遠にな。
私が、お前を―――――。
このことは彼以外、誰も知らない。知られてはならない。
お前と私だけの秘密だよ。
さぁ、さよならだ『アルマロス』
そして、また会おう『 』
・・・お前も嬉しいだろう?
はははっ!
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