ちょっとした小説




神がこの世を創られてから
そのお側に御身を置き



天上で最も力あると名高く



知らぬものなどないと云わんばかりの
膨大な知識を有しており



時を自在に変質させる



万物を平伏させて然るべき存在



それが彼のあるべき姿だろう

私を前にした時の、
百年来の友人のような彼の姿を目の当たりにすれば
そんな初冬に張った薄氷のような像など、触れただけで冷たく溶けなくなる



厳かな大天使



私の中の彼とはうまく重ならないその肩書


軽んじているという訳ではない、筈だ



確かに彼は、天上に住まわるどのような天使様よりも、
まるで私達人間という種のように笑い、
人間のように私に触れる



だが、その異形と形容されるような出で立ち、
人間という種にしては気品が溢れ整いすぎた顔立ち、
まるで掴み所がなく、飄々とした態度は人間の機微を理解するには難があるだろうし
彼の指から発せられる魔法のような奇跡は私達人間とは絶対的に確立しているのだ



何故だろうか、
思えば初めて彼を見た時から私はある種の安堵感に似た感情を彼に対して抱いていた



まるで、
彼の腕に抱かれ育ったかのような
そんな温かさが身体中を満たす




そんな初めてお会いした彼にほろりと私の口から零れた言葉は、



ルシフェル



敬意も畏怖も存在する隙間なんてない
信頼と安心を込めた


そんな言葉



あたりまえのように

ながく時を共にした友人のように

護られているように




これは


彼が大天使たる由縁なのか、


それとも―――






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