君の香り

物は試し。とは違うが、新しいものが手に入れば試したくなるのは人の性ではあるまいか

どこに出かける訳でもないが、真新しい香水をつけて匂いを嗅いでみる

さすが流行だけあっていい匂い

匂いを堪能するだけ堪能して、部屋の掃除を始めると、何やらソファーで寝ていたはずのキュウコンが首をもたげてくる

何か言いたいです!って顔で、深紅の目が見つめてくるから、根負けしてなぁに?と尋ねてみたら…

『その匂い、嫌いや』

尋ねたのを後悔するぐらい顔をしかめて言われたのは、たった今試したばかりの香水のことだろうか

不満そうに見つめていると思えば、嫌いな匂い身に纏いやがってと憤っていたのか

「ロズレイドの花弁の香りなんだって」

『濃い。甘ったるい。気持ち悪い』

「最悪な三拍子じゃん」

ふんと鼻を鳴らして、たくさんある尻尾をふさりと揺らす

口からチロチロと炎が覗くのは、心底不機嫌な証拠なんだ

「なに、そんなにダメ?」

『普段のナガレの匂いのが好きやわ』

言いながら組んだ前脚に顎を置く

その仕草が妙に色っぽくて、無性に悔しいのなんの

腹立ち紛れに尻尾を掴むと、逆に腕を伝って引き込まれる

「ありゃりゃ?」

暖かい尻尾に包まれて、ソファーに埋もれる

パートナーがクククッと喉を鳴らしながら、

『ナガレに僕の匂い上書きしたろ』

だなんて言い、ふわふわの毛並みを擦り付けてくる

何これ超気持ちいい

どうせ手足も長い尾に絡まれて抵抗も出来ないので、好きにさせてやりながら

「ねー、キュウコンはなんの匂いが好きなのさ。」

と聞いてみる

『んー?そやね』

ナガレの髪の匂いとかなぁ、ナガレの作る少し焦げたクッキーの匂いとかなぁ…

悩む素振りは最初だけで、出てくるわ出てくるわ…

なんかお腹いっぱいだし、顔が熱い

『なんや、ナガレ。もぅギブアップなん?』

「このトレーナー大好きっ子め」

含み笑いをしたパートナーは、自らの鼻先をぺろりと舐めて、さらに口を裂く

『匂いも勿論やけど、君は変に飾らんと素直にしとればえぇのに』

構ってほしかったん?と目を細められ、視線を外す

「うるせぇこのやろ」

恐らく、わざと緩められた拘束を払う

「ご察しのとーりだわちくせう」

なんやの、ナガレは可愛いなぁとすっかり香水の匂いを吸い取って、パートナーは尾を振って耳を下げた

可愛いのはお前だっての。



☆☆☆
日照りロコン君育成記念

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