踊る道化

だいぶ昔の頃に生死を彷徨った私は、なにやら波長が合うだとか言う理由で、変わった少年と夢で会うようになった

なんか知らんが数年間、ほぼ毎日彼の夢を見て、もぅ長い付き合いとなる

彼曰くマフィアが嫌いで、私と同じクラスの沢田くんがマフィアのボスだから、体を乗っ取って裏社会の戦争を起こしたいんだって

マフィアについての知識は、ここ数年でバッチリ養われてしまったさ

あのダメツナ君が天下のボンゴレのボス?なんて尋ねたら、のうあるたかはつめをかくすのですよクフフと言われた

難しい言葉知ってるね…

そんな彼が今日はなんだか元気が無い

人を小馬鹿にしたいつもの態度も表情も引っ込めて、真面目な顔で口を開く彼

「ナガレは、死にたいと思ったことはありますか」

「うん、なんども」

「では、ナガレ。殺したいと思ったことは?」

「何度も。何度も何度も思ったよ」

彼は汚い部分を隠さず私に話してくれた

だから私も、あたりまえのように汚い部分も本音も話す

彼はそれを聞いて、僅かに躊躇ってから

「…では復讐、したいと」

思ったことはありますか

左右色の違う瞳を不安そうに揺らして、柄にも無くしおらしい声色で聞いてくる

「思ったことはある。いや、思うだけなら、だね」

「どうして?」

どうして、実行しないのですか。と聞きたいんだろう

彼は復讐者だもの

「そうだな…強いて言うならさ、タイミングが力が、勇気が、意志が」

もしくは全部が無かったから、かな。

笑ってみせるけど、彼の瞳は揺れたまま

「それらがあれば、するのですか?」

「でもやっぱり、後悔するだろうからしないかな」

「どうしてですか」

「悪意で吐いた言葉でも、相手が本気で傷付いて落ち込んだら、なんかこわくなっちゃうもん」

「そんなものですか」

ちょっぴり不思議そうな彼に、そんなものです。と答える

だってそうじゃないか

仕返しが怖い。後悔が怖い。恨まれるのも、憎まれるのも、貶されるのも、全部怖い

それを忘れてしまったら、何でも出来るけど、何か大切なものが無くなってしまう

ところで彼は、何でそんな話をしてきたのだろうか

復讐が虚しくて、嫌になってきたんだろうか

「骸、止めてあげようか?」

「いいえ」

僕はなにがなんでも復讐を成し遂げます

そう即答して笑った彼は、なんだか吹っ切れたようだ

「このツンデレが」

一体何が聞きたかったのか…なんだかご機嫌になりクフクフ言い出したパイナップルに毒づく

「クフフ、言っていなさいナガレ。いまに後悔しますよ」

珍しく慰めてやろうとしたのに、なんだったんだ

「もうじき、始まりますよ」

ですから、あなたは今のまま、変わらずに僕の背中を見ていなさい

最後は恐らく命令で、私はいつもどおりに戻った骸の髪を掴む

「お前が素直になるならね」

止めてほしいと、言ってしまえば良いのに

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