別れ道と泣き虫と不審者

何分走ったのか、日頃の運動不足がたたってすでにふらふらになったころ

別れ道でおろおろしている少女が2人、こちらに気が付いて走ってくる

一人は夢の跡地で暴力に悲鳴を上げた女の子で、もう一人は育て屋でみた子だった

「あの、あたしベルっていいます!あの、あの」

ベルと名乗った少女は慌てて言葉を紡ごうとするが、うまく伝えたいことが出てこないらしい

焦れったいのか目に涙を浮かべて、手を意味もなく組んだり解いたりしている

それを遮って

「私のポケモンさん取られちゃったの!」

と叫んだ女の子も、大人の男という頼れる存在に安堵したのか泣きだしてしまった

非常に場違いだが、俺が泣かしたように見えないだろうかこの状況

プラズマ団がポケモン奪って逃げていることはそもそも知っている

ただ問題は二人が屯(たむろ)している別れ道のどちらに向かったかを、泣いてパニック寸前の少女らから聞かなきゃ進めないということ

わんわんと泣かれ、マスカットがおろおろと無意味に両手を振って俺を見上げる

残念、俺もこう見えて困っている

あいにくポケモンとばかり触れ合ってきたし、小さな子。ましてや女の子の扱いなんてわからない

そして追い打ちをかけるように、とんとんと肩を叩かれる

「すっごくめんどーだけど……あなた一体何してるんですか」

見下ろすと、黒髪にメガネとまぁ知的な、悪く言えば生意気そうな少年が睨んでいらっしゃる

「…不審者ではないんだがね……。」

不審者が不審者ですと言うわけ無いでしょ。と強く強く突き刺さる視線を受けながら、苦笑い

ごもっともだ。

「少年、この際変人扱いで良いからさ…」

この子らなんとかなない?

少年。と言う単語に眉を寄せ不満そうにしつつ、現状が理解できたかため息がもれる

俺の正体もこれらの成り行きも今の状況も…
この泣き虫達をなんとかしなきゃ、いつまでも知りえないだろうから。

俺はできたらプラズマ団を早く追い掛けたいんだけどね…


☆☆☆
『―――。』
(カナタってあまり困ったりしないけど、小さい子とか苦手だった気がするな)

(人間でもポケモンでも、小さい子に触れるときは不安そうに、手が震えるんだ)

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