歩みと逃げ

久しぶりにこんなに歩いた気がする…

少なくとも、熟睡していたパートナーが欠伸をして目覚めるほどには歩いた

ボールの中から申し訳なさそうにこちらを見ていたクリームのボールを撫で、ようやく遠くに見えてきた育て屋を見る

すると、あら不思議、何処かでよく見たグレーの衣装が育て屋から飛び出して西の道へ

その後ろへ続くように出てきた女の子も、しばらくオロオロしてから西の道へ走りだす

嫌な予感

急いで育て屋までたどり着き、中に入ると、ひどい有様だった

無遠慮に残った泥の付いた靴跡に、ポケモンが放った技のせいか焦げた匂いが風とおりの良くなってしまった部屋に浮いている

ガラスの破片が部屋の内側に飛び散り、奥へと続く扉は蝶番が片方外れ、斜めに揺れていた

そのきぃきぃと虚しく響く扉の方で、何かがガタガタといっている

念のためにマスカットにボールから出てもらう

物音を立てているカウンターの奥を覗くと、縄で縛られた黒髪の少女が一人転がっていて、思わず詰めていた息を吐いた

事情を尋ねようとする前に、相手は焦ったように、ほぼ叫ぶように

「プラズマ団や!私のポケモンや預かった子まで取られてもた、お願い、助けたって!」

最後はまるで泣きそうに言われ、胸が締め付けられたような痛みを覚える

やめろ、同情できる道を歩んでいるわけじゃない

自分を攻めながらも、俺はそのプラズマ団の団員なんだと言いだせるわけもなく…

「わかった」

と頷いて扉をくぐる

なんてズルい事だろうか

しかし縋られるその視線に、大事にされていたんだろう彼女のポケモン達に、言えるはずも無かった

『――?』

「板挟みってやつだ。気にするな…」

心配そうなパートナーに笑いかける

さて、勢いで出てきてしまったが、どうしたものか…

恐らく気持ちの問題だろうが、胃が痛んだ



☆☆☆
なんでこぅキャストとタイミングが悪いのか、神様を一から問いただしたいのだがどうだろう

[ 67/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -