続きと空腹
夢の煙を同士に託し、上から命令されたのは、近くにある育て屋からポケモンを解放しろだってさ
まぁ確かにあそこは、俺にとって好ましい場所でないのは確かだ
ポケモンを性交させて優秀な子を産ませ
他は親だろうが生まれたてのガキだろうが逃がすだなんて、えぐい行為をする奴もいる
それを言うと、もっとえぐい事してたのは俺なんだけど
生きる能力のないやつを野性に投げ捨てるだなんてことは流石にしなかった
「なぁ、マスカット」
『――!』
話の内容もわからないだろうに、擦り寄ってきたパートナーを撫でる
王子様は久しぶりの外に出たのが嬉しかったのか、早々に別行動となった
王子様は、中途半端に常識が欠けていてコミュニケーション能力低そうだから、下手にトレーナーに絡まなければいいが
まぁ、念のために焼林檎も渡してあるし大丈夫だろ
あいつを舞わせたら、並みの耐久では止められないさ
ちょっと遠い目になりつつ、サンヨウシティを歩く
ジムと一緒になったレストランでご飯でも食べようかと考えていると、昨日出会ったツタージャ少年がジムから出てきた
「あ、昨日の」
「どーも」
何となしに片手をあげて挨拶すると、ツタージャに馴々しいとでも言いたそうに睨まれた
「なに、お前俺のこと嫌いね」
『――。』
「少年、なんて?」
「え?う、胡散臭いから話し掛けないでくれる?と…ごめんなさいごめんなさい」
謝りだした少年を片手で制して、ツタージャを見る
ポケモンって人間より感受性高いし、ツタージャは特に知能が高い種族だから厄介だ
つーか、胡散臭いっての強ち否定できんな
「…まぁいいさ。ところで少年、昼飯まだなら一緒する?」
隣で空腹を訴えるマスカットが俺の髪を齧っている
「年上だし、奢るよ」
にへらと笑えば、大抵の人から警戒心は消える
しかし、俺につられて笑った少年の肩の上で、ツタージャは鼻を鳴らした
賢いポケモンってのは嫌ね
下手な事言うと全部理解しちまうんだから
ツタージャの行動に苦笑した少年とレストランに入る
何はともあれ空腹をなんとかするのが先だ
☆☆☆
「こら、俺の髪の毛食うな。なに、苛々してんの?」
『――!』
「クスクス、甘いものが食べたいーって言ってます」
そもそも相手の言葉が伝わらないからって、相手が理解できない訳じゃないんだよね
根本的に俺と少年と見てる世界はまったくの別物に違いない
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