痛み分けと言葉

さて、夢の跡地に残ったのは、プラズマ団員では俺のみ

少年はツタージャと何かを話して、ムンナとムシャーナの消えた草むらへ

少女はムンナを捕まえるんだっ!と奥へ進んでいく

あの子達とは出来たら会いたくないが、夢の煙は欲しい

この場合、俺はどうするべきであろうか…

「なぁ?マスカット」

『――。』

マスカットはムンナとムシャーナが気になるらしく、早く行こうとばかりに腕を引かれる

「んー、まぁ一応とはいえ、俺の仲間がやったもんだからな」

先程の光景を思い出さないようにしながらお尻の埃を払い、身を預けていた柱から体を離す

ポケットを探ると、オレンが数個出てきたのでそれをマスカットに渡し、歩きだす

伸び放題の草は腰の辺りまで来ていて、時折瓦礫に躓きながら、パートナーの先導に続く

「なぁマスカット。俺があいつら止めてたら、ムンナは怪我しなかったかもしれないのにな」

ムンナとムシャーナを探しながら言うと、こちらをみて何やら返答をくれたが、言葉が解らない

表情は怒っていないし、目は気遣ってくれているのか心配そうだが、結局はこちらの推測であって

実際は俺を責めているのに、都合良く解釈しているのかもしれない

『――。――、――。』

「俺にはわからんよ、悪いな」

近くに来たマスカットを撫でていると

「カナタが気にすることないよ。悪いのは、酷いことをしたあの人達なんだから」

と、言いながら横の草むらから少年が出てきた

肩に乗ったツタージャが、鋭い眼光でこちらを睨んで一鳴きすると、可愛いパートナーが俺を壁にして隠れる

お前ね、最終進化のくせに初心者ポケに負けるなよ。旅でもバトルでも大先輩だろお前

てか、少年よ、おとなしそうな顔なわりに、なんか馴々しく喋りかけてきたね

なんで俺の名前知ってんの

突然の登場人物を見つめていると、ツタージャがふんっと鼻を鳴らした

『――。』

「え?何ツタージャ…え?違っ違いますっ!違うんですっ!」

よっぽど訝しそうに見つめてしまったか、ツタージャに嗜められたか、慌てて弁解しだした少年

もしかしてと思うが、今ツタージャと話していなかった?

なに、こいつも王子様と仲間なわけ?

マスカットが自分を指差し、次に少年をと交互に差す

「なに、この少年もポケモン翻訳機なの?」

肩に乗せたツタージャに頭をベシベシ叩かれている少年を尻目に尋ねると、頷くパートナー

随分と珍しい奴らが周りにいるものだ

本当に話せているのかは知らないが、パートナーが言っているのだから確かなのだろう

なんで俺も話せないのかと少し考えてみたが、話しが出来ていたら実験など出来なかっただろうと吐き気がした

ふるふると頭を振り、考えを追いやる

ポケモンと会話可能な人物は前例が居るからか驚きはなく、むしろその様子に少年が驚いていた

翻訳機発言のためか、ツタージャがやけに睨んでくるんだが

「てことは、今のはマスカットの言葉ってわけ?」

「そうです。その子が伝えたそうだったから……あの、見てたんですよね…?」

おずおずと尋ねてきたのは、ムンナを踏み蹴飛ばした同士のことであろう

頷きだけで答えて、パートナーを呼ぶ

草むらから騒ぎを聞いて出てきたらしい小さな影

警戒して俺らが近付けそうにない傷だらけのムンナに、マスカットがオレンの実を渡してくれる

「俺も煙が目当てだったんだけど、」

別に痛め付けてまで欲しいわけじゃねーしな

殆ど自分に向けて喋ると、ツタージャの眼光が少しだけ和らいだ



☆☆☆
オレンの実のお礼か、ムンナが出してくれた夢の煙を袋で掬う

少年も夢の煙が目当てだったようで、話し合い交渉するつもりだったとか

とりあえず帰ったら可愛いパートナーをマッサージしてやろうと思う

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