彼サイド
僕の城からカナタのトモダチのウルガモス―焼林檎の背中に乗せてもらい、ゲーチスの後を追っていた時
焼林檎はカナタを抱えて飛んでいたんだけど、カナタの顔色がだんだん悪くなっていくのを見て、僕に休んでいいかと聞いてきた
カナタはトモダチにヒドイコトはしないけれど、とても優しいと言うわけでもないと思う
何か誰にも知られたくない秘密を隠すことを、トモダチに強要しているところだってある
だのに、焼林檎は彼を気遣って、さらには僕にまで気遣ってくれる
どうしてだろう?
僕が考えているのを、問いの否定と取ったのか、一度降りますよと宣言して焼林檎は近くの地面にカナタをゆっくりと下ろす
僕もすぐに地面に下りると、文字通り地に足の付いたカナタは、力なく地面にへたりこむ
小さなトモダチがちょっと怯えたような仕草が少し可愛くて、可笑しくて笑ってしまった
「カナタ様、大丈夫ですか?私の飛び方が下手でしたか?」
心配してそう呼び掛ける焼林檎の言葉なんてわからないはずのカナタは、気分の悪そうな顔で
「大丈夫だ、悪いな。ありがとう」
と笑った
カナタはこういうときズルいと思う
だって秘密や隠し事があるのに、ひどく素直に感謝と謝罪をする
まるでニンゲンじゃなくて、トモダチみたいに何の疾しさもなく笑える…
さっき出会ったトレーナーだってそうだ
ゲーチスの演説を嫌悪感を抱きながら聞いているらしい少年は、眉間に皺を寄せながら肩に乗せたツタージャに話し掛けていた
驚いたのは、低個体値であるという身勝手な理由で捨てられたのにも関わらず
ツタージャは少年に着いてきてよかったと言ったのだ
眉間の皺が消えた彼の頬に口付けるのを見つめる
今まで僕が接してきたトモダチとあまりにも違いすぎて
「あり得ない!ポケモンがそんなことを言うだなんてっ!」
と思わず口を挟んだ
彼のことを知りたくて、知り合ったばかりのチョロネコとバトルを挑んだら呆気なく負けてしまった
その後に何か話した気がするんだけど、今イチ覚えていない
いつの間にか立ち尽くしていたみたいで、気付けばゲーチスの演説も終わり、同士達も解散していたよう
まるで、今までの僕を否定するようにあっさりと勝っていった彼を思っていると、カナタが近づいてきた
「N様、置いていかないでくださいよ。俺は一応、あなたの護衛で来たんですから…N様?」
カナタも彼も、よくワカラナイ
トモダチの話が僕みたいに解るらしい彼に、トモダチの話は解らないし秘密もあるカナタ
まったく違う二人なのに、僕が持っていないものを持っているみたい
ちょっと困ったように眉を下げるカナタがやっぱり小さなトモダチに似ていて、頭を撫でてみる
振り払わないけど、さらに困った顔になったのが面白かった
☆☆☆
トモダチの気持ちや言葉は不思議とよく解るのに
僕にはニンゲンの知り合い達がワカラナイ
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