嬉しくてビックリで不思議
賢いパートナーが近くのポケモンセンターから水を持ってきて、心配そうに覗き込んできた
『――?』
「あぁ、大丈夫だ…悪いな」
途中休み休みとはいえ、不規則に空中を揺さ振られ続けた俺は、地面と仲良ししていた
幸いにも、ここはマンションの裏なので人目もないし、綺麗に舗装、清掃も行き届いているようなので服の被害も少ない
ボールから心配そうに見つめてくる焼林檎に笑いかける
人目が無いとはいえ、いつまでも地面にへばりついているわけにもいかず、仕方なしにゆっくりと立ち上がると膝が小さく震えた
ともすれば逆流させてしまいそうな体内の様々なものを喉で押し止めてから、水を飲む
胃液で荒れた食道を洗い流すと、幾分か楽になった
さて、これ幸いと俺を置いていき、トモダチの背中を追い掛けていった王子様を探さなければ。
歩きだした途端、よろめいた体をマスカットが支えてくれる
『――?』
「悪い、もぅ大丈夫だから」
本当に大丈夫かと問いた気な瞳に苦笑いしてから、マンションの裏から出て、柔らかい緑の髪を探す
目立つ大男と同士たちが広間を着々と占領し、洗脳という演説を始めたのが遠目に見えたが
目的の姿だけが見えない
新人トレーナーと未進化ポケモンしか居ないような町で焼林檎を飛ばすわけにもいかないし、どうしたものか…
ピタリと寄り添うマスカットを撫でながら思案していると、
「ツタージャ、体当たり!」
「チョロネコ!」
「……。マスカット、俺は出ていくべきか?」
『――』
見知らぬ新米トレーナーに、先程出会ったばかりのトモダチをけしかけている我らが王子様
彼が負けるのを見届けながら(まぁバトルも初めてな野良未進化ポケモンとなら当然だ)ため息
なんだか驚いたような嬉しいような顔した王子様の邪魔するほど空気が読めないわけでもなく…
遠めに見守るのに撤することにした
☆☆☆
彼のトモダチが、彼を勝たせられたと喜んでいる
なんでだろう?傷つけるものに対して、どうして何かを与えようとするの?
何故何故なんで?
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