過去話と、仕事人!

「そういえば狂助って、バトル嫌いなのに、いつからバトル始めたの?」

そんなジャローダを連れた友人の言葉が切っ掛けで語ることになりました…

むかーしむかし…


スクールを通り越し噴水にも目もくれず、ただ目的地を目指して歩く

後ろから小さな足音が、少し駆け足で続く

「付いてくんなし」

『……。』

半年ほど前、親から誕生日にもらったキバゴは、つっけんどんな態度をとる俺に呆れたようにしながらも付いてくる

キバゴを貰った初日に友達と行ったバトルはボロ負けだった

ポケモンは弱いしトレーナーは指示が下手だと笑われた俺は、たった一日でバトルしなくなった

知識は勝っていた筈だし、負ける予定なんてなかったのに…

育て屋に通って、色んなポケモンを見て、世話の手伝いもしていた

経験が多かったはずなのに負けたのは相当悔しかった

思い出すだけで眉が寄るのを感じながら、目的地に到着し、ドアをあげる

「君、また来たんやな。ポケモン好きやね」

「………。」

親から言わせれば『狂ったように』知識を付けはじめ、『狂ったように』通いだした育て屋に着いたとたん、にんまりとした笑顔がカウンター越しに待っていた

育て屋の孫娘を無視して奥に行こうとしたが、すぐに止められる

「君、まだキバゴと仲直りしてないん?」

「……。」

孫娘の目がキバゴと俺を見る

その瞬間、笑顔はすぐに消え、呆れたような顔になる

「いつまでもそんなんで、他人のポケモンの世話なんてようさせんわ。…なぁ、ロメオ」

『……。』

孫娘の後ろで棚か何かを運んでいたワンリキーが迷いもなく頷く

「その先は言わせやんといて。今日は帰りぃ」

孫娘とワンリキーは、同じ仕草で片手を振った

キバゴの何かを諦めていない目も、孫娘とワンリキーのすべてを分かり切った態度も

全部が苦しくて逃げ出したかった



行きとは違い、寄り道をしながらとぼとぼと家まで帰る

相変わらずこんな俺に付いてくる足音

「付いてくんなし」

『…。』

「俺についてくると、またバカにされるぞ」

始めてのバトルで負けた

始めてのバトルで勝たせてやれなかった

こんなトレーナーなんかといるポケモンは、まわりからみたら可哀想の一言に尽きるんだろう

自分が情けなくて、とてもキバゴと対等になんてなれなかった

キバゴを振り向かないで言うと、背中を何かが思いっきり押してきた

声を上げる間もなく、たたらを踏んだ足をそのままに、目の前に迫っていた噴水に突っ込んで惚けてから、痛みがくる

『俺が悪いと言えばいいし、思えばいい!現に俺の経験不足のせいで負けた!お前の指示は間違っていなかった!』

何を言っているか、さっぱりと解らない

ただ、なにやらキバキバと叫ぶキバゴは怒っているらしかった

『俺のせいで負けたのだから、自分を攻めるのを止めろ。
たった一度負けたくらいで俺は挫けたりなんかしない。お前のパートナーだぞ!』

俺のせいで、負けたのを怒っているだろうか

こんなトレーナーなんかじやなきゃよかったと思っているのだろうか

噴水でただでさえ湿っているのに、視界まで濡れてきた

「俺がダメだったのに、お前までバカにされて、弱いとか言われて、やっぱりこんなトレーナーじゃ嫌だよな」

情けないことに、ボロボロと泣くしかない俺に、キバゴは飛び付いてきた

「キバゴ?」

『俺は強くなってみせる。だからお前も諦めないでくれ』

濡れるのも構わず、何かを懇願するように鳴く

その言葉は相変わらず解らないけど

「俺、お前に釣り合うように頑張るから、まだ見捨てないでくれるか?」

諦めるなと言われた気がしたから、また頑張ってみようかと思った


☆☆☆
「進化したら、オノノクスになるんだよな」
『?』
「よし、オズだ。お前の名前はオズにしよう」
昔読んだ絵本のように、俺も変われるようにと願って

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