親戚と特別と、仕事人!

「きゃぁぁぁぁ!」

和やかな昼過ぎの空気を、遊園地からの楽しそうな声が響いている

今日は昼から夜中までの勤務のため、のんびりとギアステーションまでライモンの町並みを歩く

遊園地やらミュージカル、さまざまなスポーツのスタジアムがある町は常に賑やかで、トレーナーでない人も、たくさん訪れる

「相変わらず騒がしい町だよな」

寝癖を直しながら愚痴ると

『自分が住んでるくせに』

『マスター朝苦手だもんね』

トテトテと二本足で着いてくるサクマが意地の悪い顔で笑い、空からアーリズの笑い声が降ってくる

「賑やかなのはいいんだが、夜は明るいし朝はうるさいしで大変なんだよな」

特に休日はジェットコースターやらなんやらに乗った人の悲鳴が響く

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ」

ほらな。

欠伸を噛みながら職場への道を進む

が、何故かサクマが脚を止め、アーリズが俺の前を塞ぐ

「何、どした?」

『マスター、悲鳴が…』

『近づいてきてる』

二人が上を仰ぎ、俺もつられて上を見ると

何やら青いものが悲鳴をつれて落ちてきている

「いやぁぁぁ!ボンちゃんとまってぇぇぇぇ…」

勢い良くドスン!と…ではなく、意外に穏やかに着地したそれは、肩に少年をひっ付けたガブリアスだった

『一体なんなの』

サクマの鳴き声に、遊園地からの悲鳴がかぶる



「うちのボンちゃん、マイペースなんですよね…」

「そんな早いマイペース聞いたことないわ」

ガブリアスとオズが並んで何か話しながら歩くのを眺めながら、思わず突っ込む

ガブリアス(女の子でボンちゃんと言うらしい)に付属していた少年は、ギアステーションに用があったらしい

それで他称マイペースのガブリアスに乗って、脳内シャッフルされながら飛んできたと言うのだが

「マツリに止められたときにやめといたら良かった」

ね、マツリ。と言われたヒヤッキーは、ニコニコした顔とは裏腹に怒っているのか、少年の顔面に潮水を吹き掛けていた

なんか、見ていて可哀想なんだが

げほげほと口に入った水を吐き出す少年に、追い打ちで、堅くて有名なカゴの実を投げるヒヤッキーは、変わらず笑顔だ

…種族柄仕方がないのかもしれないが

リサイクルでそうそうにカゴの実を再生して第二投目を準備している辺り、やっぱり怒っているのかもしれない

そんな様子を見つめるガブリアスは、仲裁に入るでもなくのんびりと着いてくる

…確かにマイペース

「ボンちゃんは僕のパートナーで、マツリはこの地方に来てから仲間になったんです。」

ハンカチを渡してやると、礼を言って受け取り笑いながらヒヤッキーをボールに戻す

戻る間際に投げられたカゴの実が頭にあたり鈍い音を立てたが、慣れているのか笑顔は崩れなかった

「なに、イッシュ出身じゃないの?」

「あ、はい。シロナさんって知ってますか?」

「あぁ、この地方にもくるチャンピオンだろ?」

「はい!彼女と同じ地方出身なんです!田舎の雪国なので、知らない方が多いんですよね」

ねーボンちゃんと見上げた巨体は、オズとの話しを切り上げて頷く

「ラブラブじゃねーか」

『彼女は他の地方でチャンピオンと戦ったこともあるらしい。是非手合わせ願いたいものだ』

至極真面目に頷きながら答えたオズをボールに戻す

俺の手持ちなのになんでリア充なんだ…

「さいですか。ところで、なんの用でギアステーションに?」

もぅ近くの目的地を見ながら問うと、少年の笑顔が濃くなった

「遠い親戚に会いにきたんですよ。」

電話でしか話したことはなくて、顔は知らないんですけどね

「兄弟でギアステーションに働いていて、バトルも強いんです!」

「へぇ、俺の知ってる人かな」

同じ職場の人の顔を浮かべながら呟くと、少年はガブリアスに飛び付く

「きっと知ってますよ!あと、二人が話す狂助って人とも会いたいんです」

楽しみだねボンちゃん!と笑った横で、口元が引きつった俺は悪くない


☆☆☆
「親戚の名前は何ていうの?」
「ノボリ兄さんとクダリ兄さんです!あれ、どうしたんですか?」
「………。」



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