莠悟香荳?分出口と繧ー繝ェ繝?

ご案内
Guide


異変を見逃さないこと
Don't overlook any anomalies.

異変を見つけたら、すぐに引き返すこと
If you find anomalies,turn around immediately.

異変が見つからなかったら、引き返さないこと
If you don't find anomalies,do not turn back.

莠悟香荳?分出口から外に出ること
To go out from Exit 莠悟香荳?分.

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「うそやろ工藤。」

監督生は思わず、元の世界のネタを呟いた。

最近イグニハイドの友達が教えてくれたゲームにやたら似ている説明書きがされた壁掛け看板に、頭を抱えたくなる

ここは魔法溢れるファンタジー世界だし、今までも妙な体験は沢山してきた

そうだと言っても、気軽にホイホイ訳の分からんところに召喚しないでいただきたい

先程まで廊下を歩いていたのに、角を曲がったら地下鉄の駅の地下通路のような場所になっていたのだ

唯一の救いは

「おい子分!クドウってなんだ?いや、そんなことより、ここはどこなんだゾ?!」

と怯え半分勇み半分の親分が一緒のことだろうか

グリムの青い目はきょろきょろと忙しなく辺りを見渡し、警戒のためか毛が逆だっていつもよりぼわぼわしている

ユウは親分がこれ以上怯えてしまわないように、ゆっくりとした動作で抱き上げる

ずしりとした重みと温もりが、自分の怯えを溶かしてくれる気がした

いつの間にか浅くなりかけていた呼吸に気が付き、大きく深呼吸して肩の力を抜く

「こういうのはルールを守って進めば何とかなるよ。」

多分ね。と不安な言葉を付け足して、監督生はグリムを抱えたまま歩き出す

「早くここから出なきゃね」

グリムは大きな丸い目でユウを見上げ、肉球のついた小さな手で子分の服をぎゅっと握った



さほど広くない通路は、足音が反射して聞こえる。

そのせいか後ろから誰かが着いてきているような気になって、ユウはちらちらと後ろを振り返りつつ進む

2度ほど曲がると、長い直線の通路に出た。

ユウは立ち止まり、周りを観察してみる

無機質な白色蛍光灯に、何かしらの管理室の扉。天井付近の壁に換気口があり、監視カメラがついている

扉の無い方の壁には、ポスターが貼られている。病院へのアクセスや、どこかのデパートのセールの知らせ等、よくある感じのやつだ

出口を知らせる天井の案内看板には、「莠悟香荳?分出口」と書かれている

あの文字化け看板が既に異変だろと言いたくなったが、多分あれはデフォ。最初に見た壁に付いてる案内看板からなんかバグってたし。

ユウの腕に大人しく収まっているグリムが

「…異変ってなんなんだ?」

と少し震える声で問うてくる

「さぁ…わからないよ…」

安心させるような気の利いた言葉は出て来なかった。

深呼吸して気持ちを少し落ち着けてから、監督生は通路をゆっくりと歩きはじめる

すると、監督生達が進むのを待っていたかのように、奥から通行人が現れた

「…あれが異変か?」

「さぁ、様子を見てみよう」

コソコソと相談しつつ、壁に寄る。

まさか急に襲いかかってきたり、近付いたら化け物になったりはしない、と、思いたいんだけど…

グリムを抱きしめる腕に力が入る。馬鹿みたいに心臓がバクバクと音を立てて動いている

ユウは緊張の面持ちで、前から歩いてきた人物をじーっと観察し…

「なるほど。戻ろう」

と早足に引き返し始めた

「どうしてだ?」

「前から歩いてきたの、エースだった」

「アイツもここに閉じ込められたのか?なら、声掛けたら良いじゃねーか!」

大きな声を出した親分の口を慌てて塞ぎ、ユウは足を止めないまま

「スートが反対だ。偽物だよ」

と早口で言った

「多分だけど、ここは僕の記憶が元になってるんだ」

ユウは最初の案内看板があった場所まで戻ると、やっと足を止める

「記憶?」

この世界にはない機種のスマホの広告…欲しくてずっと眺めてたからよく覚えている

「ポスター、どこかで見た事あると思ったけど、元の世界で見た物だ。」

グリムは青い目をまん丸にして子分をみあげる

「エースが出て来て、わかった。僕の記憶を元に、違和感のあるもの。それが異変だ」

グリムは痛いほど抱き締めてくる子分に文句を言うことなく

「……。」

少し冷たい震える指先が、なんだか可哀想だなと思った



仕組みが分かってしまえばこちらのものだ

地下通路の間違い探しをすればいい

ただそれだけの事だ

監督生はグリムを抱えてスタスタ歩く

見計らったかのように、また前から人が歩いてくる

「デュースだね。星送りの衣装だ」

「なんか歩き方が変じゃねぇか?引き返すんだゾ」

「んー、でもわざわざあの服を着てるってことは…やっぱり。かなり緊張した顔してるし、異常じゃなさそうだね」

「あんなギクシャク歩いてるのに?」

「緊張するとあんなんだよ」

見知った友の硬い表情を見送って、ユウは前へと進む

グリムは不満そうだったが、案内看板の数字部分らしき文字化けの形が変わったので、異変なしで正解だったらしい

「案外直ぐに出られるかもね」

「……。」

グリムは大きな丸い目でユウの少し緩んだ表情を見上げて

「……。」

やはり何も言わなかった



地下通路は何故か、見しった人物の姿を多く象った

歯ブラシを構えるトレイ(パッと見異常だが異変なし)、無表情で完全オフ顔のケイト、法律を口に出さないリドル

ニッコリ笑顔のレオナ、監督生を見てもしっぽを振らないジャック(ユウは割とショックを受けた)、マドルを落としても気にしないラギー

血みどろに立ち尽くすフロイド(グリムは引き返そうと強く訴えたが異変なし判定だった)、人にキノコを生やそうとするジェイド、唐揚げを頬張るアズール

笑顔でハグをしに来たカリム、虫を踏み潰すジャミル(監督生の方が思わず悲鳴をあげた)

スチームパンク姿のエペル、詩を口ずさみながら歩み寄るルーク(アイツ自身が異変だとグリムは呆れていた)、顔パックとバスローブ姿のヴィル

人間姿のオルト、楽しそうにガケモを打つイデア

声の小さいセベク、動物と戯れるシルバー、監督生の頭を撫でていくリリア、少し微笑むマレウス

「何回正解すれば出られるんだろう…」

ユウは少し疲れた様子で足を止める

文字化け部分の変わった案内看板を見るに、進んではいるらしいのだが

終わりの見えない間違い探しに、精神が参ってしまいそうだった

ユウの腕が限界を迎えたので、テチテチと小さなあんよで子分の少し後を歩いていたグリムは、ユウの隣に並び、もう少し先に行ってから立ち止まる

「もう少し、ゆっくり進めばいいんじゃねぇか?」

「…グリムは、さっきから……いや、」

ユウはニッコリ笑って歩き出し、通り過ぎざまに親分の頭をくしゃりと撫でる

「進んでから考えよう」



「ついに先生も出てきた」

ユウはこんな状況に関わらず、思わずちょっと笑ってしまった

子犬を抱えるトレイン先生の違和感が凄すぎたし、インパクトが強かったので

迷わず引き返した先では、全てout of stockなサムが待ち受けていた

「サムさんは先生の括りなんだなぁ」

なんて呟きつつ、筋肉を見せびらかすバルガス先生を通り過ぎ、女王様のムチを持つクルーウェルを見て踵返す

白鳥仕様になったホワイト学園長を眺めること数秒、横を通り過ぎようとしているグリムの手を引いて引きかえす

そして

莠悟香荳?分出口

「これで、やっとゴールってことかな」

ご案内に書かれた文字化けと同じ文字化けになった数字部分を見上げ、ユウはため息のように呟く

疲労のためかすっかり無口になってしまったグリムの手を引いて、嫌という程見た通路へと続く角を曲がる

先程までとは違い、通路の果てに上り階段が見えた

「やった!出られる!」

ユウは小走りに通路を進む。前からは当然、誰も来ない

階段の前に辿り着き、膝に手をついて1度立ち止まる

上がってしまった息を整えようと、深呼吸を繰り返す

歩き続けた足が重く、勢いのまま階段を駆け上がる体力は流石になかった

「なぁ、子分」

少し後ろで、グリムが呼ぶ

「なぁに?」

ユウは膝に手をついたまま、顔を上げずに呼びかけに答える

「ここから出るのか?」

「…出るよ。」

ユウは階段の先を見た。上から、いつもと同じ喧騒が落ちてくる

階段の先から差し込む眩しい光は、人工のものでは決して無い暖かなものだ

「ここでなら、誰にでもいつでも会えるんだゾ」

グリムの声は、とても静かだった。そして寂しそうにも聞こえる

「…ごめんね。ありがとう。でもキミとここにはいられない」

ユウはとっくに気が付いていた。

いつまでたってもお腹がすいたと訴えないし、何度も間違った答えに導こうとする

いつもなら、早くこんな場所から出ようと急かすはずなのに、逆に留まるように促そうとする

そして、相棒なら、親分なら、子分の無事を優先する

「さよなら。」

ユウは振り返らなかった。真っ直ぐ外を見上げて、一段一段、登っていく

日常が近くなる。

階段を登りきる瞬間

「…子分、楽しかったんだゾ。ありがとな」

そんな声が、聞こえた気がした



☆☆☆
流行りに乗り遅れつつ乗りました。
似て非なるなにかです





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