たまには真面目に、仕事人!

ノッテタタカウが代名詞のサブウェイ

今日の仕事場所は、いつものホームではなく、マルチトレインの車内

ガタンゴトンと一定に刻まれる揺れを感じながら、踏みしめた床は酷く不安定な気がする

「オズ、ドラゴンクロー」

「ジャローダ、リーフブレード」

俺と、隣に立つ友人が指示をすれば、不安定な足場がさらに揺れる

抑揚のない女性の声がチャレンジャーの敗退を告げると、バトル相手のトレーナー二人は悔しそうに俯く

敗者を降車さすべく、電車が停まる

「狂助が仕事しているの、初めて見たかも」

『確かにね』

「俺だって給料は欲しいんだよ。つか狂助呼ぶな」

トレーナー達が降りた駅が流れていくと同時に口を開いた友人は、ニコニコと楽しそうだ

その奥のジャローダはあきれ顔で鼻を鳴らしていたが

「駅員もトレイントレーナーをやるんだね」

『いや、普通はやらない。サブウェイマスターとバトルしてから採用されたんだ』

オズが説明してくれたのか、友人とジャローダは感心したように頷いている

「狂助強いもんね」

「俺の手持ちが強いんだよ」

ボールから出てきて座席を上った兵長の横に座り、硬い体を専用の布で磨く

カシャンカシャンと顎を鳴らす兵長は気持ち良さそうに目を細めていて、嬉しくなる

『…君のそういう考え方は立派だと思うよ』

パートナー命のジャローダが、珍しく俺を見ながら目を細めて優しく笑う

『その考え方、だけは、ね!』

友人に寄り添い、流し目で俺を見ながら、何か念を押すように一声鳴かれたが

「褒められてんのか貶されてんのか…」

「ジャローダは、狂助の考え方が好きだって言ったんだよ」

苦笑を浮かべている友人をみれば、何を付け足したかは何となくわかる

「そりゃどうも」

と返事を返して、ボールから飛び出てきたふぅすけの綿毛のブラッシングもしてやる

マルチトレイン、20両目

真剣勝負のバトルをサボることは出来ない

まぁ、他にもサボったり負けたりしたらダメな理由はあるんだけどな

今日一日は真面目に働くかとため息を吐いて、開いたドアを見据え立ち上がる

咄嗟に浮かべた営業スマイルで一礼する様を、友人とジャローダは面白そうにみている

大体普段の俺を見ている奴が仕事モードの俺を見た時、不思議そうだったり有り得ないものを見たような顔をしやがるが…

俺もやるときはやるっての

次のバトルに参加したいらしく、出てきたサクマを見たトレーナーが僅かに下がる

まぁ見るからに好戦的な奴が出てきたら恐いわな

「ようこそ。こちらはマルチトレインの20両目!次が我らがボス、サブウェイマスターとのバトルとなっております。
もしも私達に勝てたら、ではございますが」

「僕ら、今日は負け無しなんです。さぁ、バトルと行きましょうか」

ノリの良い友人の笑顔にか、ずいっと前に出たオズとジャローダを見てか、相手トレーナーの顔が完璧に引きつる

本日、21両目まで行けたトレーナー数が0を上回る様子はまったく無い


☆☆☆
「てゆーか負けたらボス達にクビにされる」
「え?なんでなの狂助」
「狂助呼ぶな。あのなぁ、今日、ボス達はシングルとダブル、それぞれのトレインを担当してる」
「…つまり、隣の車両は無人なの?」
「さぁ、勝って勝って勝ちまくるぞー」
「………………。」

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