痣とイデア
イデアはミステリーショップのお菓子コーナーに期間限定の駄菓子を物色に来ていた
駄菓子コーナーには既に先客がおり少しげっ。と身構える
「おや?監督生氏?」
見知った顔であったことからイデアは肩の力を抜いて歩み寄る
監督生はイデアに気が付くと、にへらと笑って
「こんにちはー」
と間延びした挨拶をした
その顔を見て、イデアは少しギョッとする
「監督生氏、拙者が言うのもなんだけどクマすごいよ?大丈夫?」
「んー…実は最近、魘されて眠れなくて…」
監督生はぽりぽりと頬をかく。イデアは少し目を細める。
「首、怪我でもしたの?」
包帯で隠されている首元から、なんだか妙な気配がする。どちらかと言えば、嫌な気配
「えと、その、」
監督生は何故か言い淀んだ
イデアは監督生の手を掴み、もう片手で包帯をずらす
「…なにこれ」
「朝起きたら、首にへんなアザが出来てて…」
監督生の首は赤紫色になっていた。首を覆うようについた両端が4つに分かれている。その形はどう見たって手だ。
「…監督生氏、今日拙者の部屋に泊まる?」
「え?」
「拙者は今日、オールでゲームする予定なんで。」
魘されてたら起こしてあげるし。とイデアは監督生はの頭をぽんぽん撫でる
「んー、お兄ちゃん属性…。お邪魔してもいいですか?」
「もちろん。対価は駄菓子でいいですよ、監督生さん」
「アズール先輩の真似ですか?」
「似てた?」
「似てないです」
監督生はクスクスと笑う。イデアもつられるように笑った
イデアは自室でゲームをしていた。
今夜中にクリアしたいイベントがあるのだ
イデアのベッドには監督生が丸くなって眠っている。
初めは部屋の主を差し置いてベッドに入る事を遠慮していたが、半ば無理やり横にしてやるとあっという間に寝入ってしまった。
すやすやと眠っている姿は普段より幼く見える
イデアは監督生が眠るベッドを背もたれ代わりにしつつ、手元のコントローラーに集中する
イベントももう終盤という時、背後の気配がもぞりと動いた
「う、…うぅ…」
と監督生が魘され始める。重たい空気と妙な気配が部屋に満ちていく
イデアはゲームの手を止めなかったし、振り返りもしなかった
ただ、
「ねぇ。」
と冷たい声で誰かに話しかける
「いま手が離せないから…このままこの子に手を出さないなら放っておいてあげるけど」
「ううぅ…うっ…」
監督生の魘される声が続く
「これ以上…触れる気なら、消すよ」
イデアの静かな声が不思議とよく響く
「…………。」
妙な気配が消え、監督生の穏やかな寝息が聞こえ始めると、イデアは少し口元を緩めた
「おやすみ。」
「よく寝れた?」
「はい!お陰様で」
「そう、良かった。顔洗っておいで」
監督生は久々に朝までぐっすり眠ることが出来た。イデアはイベントクリアに勤しみ徹夜したらしく、目の下にクマがくっきりと出ている
「ゲームはクリア出来たんですか?」
「余裕ですな!今はアイテム回収で3週目に入ったとこ。」
「レアアイテムがドロップすると良いですね」
「ドロップするんじゃなくて、ドロップさせるんですぞ!出るまでやれば確率は100%…は、いいから…ほら、早く顔を洗っておいで」
「ふふ、そうします」
監督生はイデアに促され、洗面所を借りて顔を洗い、鏡を見て驚く
「あれ、痣が消えてる…」
不思議そうに首に触れる監督生に、イデアは
「あぁ、もう大丈夫だからね。」
と笑う
「??」
監督生はゆっくりと首を傾げたが、イデアは笑うだけで答えなかった
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