ダブルバトルだ、仕事人!

一歩踏み込んで、後ろ手にドアが閉まる

窓の外の景色が流れ始め、暗闇と時々差す人工的な光のみとなる

ガタンゴトンと一定のリズムで刻まれる音と振動

今日は休みなのに、職場の電車に乗っている

ノッテタタカウ。戦闘列車

給料保護とクビ回避のため、なんて格好つかない理由だが

「やるからには、負けたくないんだよな」

取り出すボールは2つ

相手は黒と白のペアルック

一人は無表情、一人は笑顔

ふふっ、俺の顔が引きつってきたぜ!

「オズ、ふぅすけ、頼むぞ」

『あぁ』

『任せてよぉ』

ノボリさんはダストダス、クダリさんはアイアントをボールから出した

「兵長、お前がいんぞ」

『……。』

手持ちのアイアントの兵長に声を掛けるが、ボールの中から見上げてくるだけだった

「先攻はそちらからどうぞ、始めてくださいまし」

指先まで伸びた右手で指され、背中真っ直ぐ前を見据える

「狂助とのバトル、僕本気!負けない!」

キリッとした表情に、スッと伸びた背筋

同性ながら羨ましいほど格好いい

「では遠慮なく
ふぅすけ!アイアントに甘えるから追い風!
オズ!龍の舞からダストダスにダブルチョップだ!」

双子のコンビネーション、ダブルバトルのプロが相手

久しぶりに本気で行かなきゃならないようだ



「僕クダリ、君に勝っちゃった!」

「負けた…」

「僭越ながら、私達の方が僅かながら狂助様を上回ったようです」

ですが、ブラボーでございます!

と無表情で喝采送るノボリさんの後ろで、クダリさんが鼻歌を歌いながら回っている

「狂助、強い。僕、久しぶりに本気出した」

「俺も久しぶりに本気出して負けました…」

ガタンゴトンと未だ揺れる椅子に座ると、両脇にボスが座る

え、何これプレッシャーなんだけど

「狂助様、そう落ち込まないでくださいまし」

「そうは言われましても、負けは負けです」

それに、二人とも今日連れてる手持ち、本当のメンバーじゃないでしょ

ノボリさんを見上げると、ほんの僅かに口先が上がる

「気が付いた?すごい」

「一目みゃわかります」

ニッコニコとご満悦の様子のクダリさんと、どこか満足そうなノボリさんに挟まれながら、ため息を吐く

「言いたくないんですけど、俺、人間不信の時期がありまして…ポケモンばっか見ていたんです」

だから、一目見たらそのポケモンの実力はわかりますよ

グイッと腕を引っ張られ、体が傾ぐ

キラッキラの目をしたボス二人に見下ろされ、嫌な予感がした

ボールの中で、兵長がカシャンと顎を鳴らすのが聞こえる

「僕のポケモン見て!」

「私もお願いいたします」

カシャンカシャンと顎を鳴らす兵長の意味するは『やるか?』である。ちなみに殺すと書くほう

無口のこいつは顎を鳴らして何かしらの意思表示をするのだが、友人やNにはわからなかった

が、俺には何故かしっかり伝わる

周りは首を傾げるが、よく冷や汗もんのことを言うのでよかったちゃあよかった

サブマスに『殺るか』なんて言っただなんて、怖すぎる

「いや、」

嘘だといわれず、受け入れてもらえたのが嬉しかったからやらなくていい

そう目で伝えると、またカシャンと音がした

今回バトルに出なかった兵長とバクフーンのサクマが微笑ましそうにしている

とりあえず今の状況をなんとかしてくれ


☆☆☆
「君もアイアント持ってる、おそろい」
「あぁ、兵長ですか。ABSv素晴らしい陽気はりきりアイアントです!!」
「ブラボー!」
「狂助すごい早口」


☆☆☆
特技は育成とジャッジ
この後、サブマスから育成の手伝いをさせられたとかしてないとか

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