だけどサボるよ、仕事人!

「なんて事がありましたちくしょー」

「あはは、狂助も大変だね」

「狂助呼ぶな」

『仕事をサボるからそうなるんだよ、自業自得でしょ。狂助』

「お前もたぶん狂助呼んだだろ今」

サブウェイのホーム

俺のサボり定位置のベンチに、今日はもう一人

結構長い付き合いの友人は楽しそうに笑い、その隣でそいつのパートナーのジャローダが見下すように鳴いた

少なくとも良いことは言ってないのがわかる

相変わらず、パートナー以外に厳しいやつだ

ちなみにこの友人、ポケモンと話が出来る。羨ましい

「ジャローダ、言いすぎだよ。ところで今喋ってて大丈夫なの?」

「大丈夫、俺バトルが仕事になりつつあるから。そう言えば、Nとか言ったっけ?見つかったの?」

何だか知らないが、えらくご執着なトモダチらしかったけど

「だいぶ前にね」

『逆にこの子が逃げ出して、連れ戻されたのが最近』

「言わないでよ…ジャローダ…」

恨めしそうに見上げる友人の視線を、ジャローダは悠々と受けとめて笑っている

いつものことなんだろう

「羨ましいな、オズ」

『そうだな』

さすがに巨体をもつオノノクスを出しておくと目立つため、オズはボールの中

ふぅすけがジャローダの体を登って遊んでいた

和やかな空気に包まれた昼過ぎ…なんてうまくはいかない

ジャローダが尻尾で何かを指し、それを追った友人が顔を引きつらせた

あれ、今しがた話した、昨日の様子と類似しているんだが

ジャローダの尻尾と友人の視線の方、つまりは俺の後ろを見ると

「何をしているのでございますか、狂助様」

俺は狂助じゃないと言えなかった、さすがに

日光の射さない人のあふれる地下のホームで、例え離れていてもすぐに気付くであろう独特の雰囲気

張りつけた無表情と下がった口端

黒の制服は俺のと違い襟も裾も長い

俺は昨日、この解説をした気がするが、間違ってない

だってその人はもう一人の

「ぼ、ボス!」

クダリさんとペアルックの制服はサブウェイのボス、サブウェイマスターの証拠

しかもペアルックは服だけでなく、顔も背丈も同じ

双子のボス達の、見た目で違うところは、二人の浮かべる表情のみとは有名な話

鋭い眼差しで探るように見渡したボスにびびったか、ふぅすけが小さく鳴く

「クダリの言ったとおり、またこちらにいらしたのですか」

半眼で、座っているため煽り構図のボスことノボリさん…死ぬほど怖い

「クダリさんから聞いたって…」

あの人、給料は守ってくれても、これじゃあクビが近いんですけど

はぁぁぁ、と長いため息を吐いたノボリさんは、おもむろに口を開き

「クダリとバトルの約束をしたそうでございますね」

と言う。変わりない無表情…怒ってんのかわからない

コクコクと首を縦に振ると、相手の口元がほんの僅かに緩んだ気がした

「私ともバトルしてくださいまし。」

強いと噂をお聞きしています。ぜひお手合せを

と、薄ら笑った

クダリさんとは違う、大人な笑み

なんて言ったクダリさん怒りそうだが

「ももも、もし、断ったら、どうなります?」

「そうでございますね、その時は…………」

「その時は……?」

「クスッ。さぁ、仕事に戻ってくださいまし」

楽しそうに、ゾクリと背中にくる笑みを残していった黒の人を見送る

騒つき人の多い中、あの人の靴のカツンカツンと離れていく足音がしっかり聞こえた

「だ、大丈夫?」

「こ」

「こ?」

「怖いわぼけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

心配そうな友人の向こうで、ジャローダがうるさいと訴えるように一声上げた

ふぅすけ、お前はなんで楽しそうに笑ってんだ


☆☆☆☆
「サブマス怖ぇよ…」
『サボるのをやめたら良いだろ』
「オズ、俺が出来ると思うか?」
『………。』

☆☆☆
ひたすらひた走って下さいましっ
彼の口調って難しい

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