ゆめとマレウス

ハルトは夢を見ていた

狭い箱に、仰向けに寝転んで入っている夢だ

体は金縛りのように動かない

見上げる限りの夜空が広がっている

夢はただそれだけだった




ハルトは夢を見ていた

狭い箱に、仰向けに寝転んで入っている夢だ

体は金縛りのように動かない

見上げる限りの夜空が広がっている

夢はただそれだけだった

…いや、少し前回と違う

遠くに足音が聞こえる

夢はそこで終わった



ハルトは夢を見ていた

狭い箱に、仰向けに寝転んで入っている夢だ

体は金縛りのように動かない

見上げる限りの夜空が広がっている

足音が近付いてきて、誰かが覗き込む

誰かの顔は影になって見えない

夢はそこで終わった



ハルトは夢を見ていた

狭い箱に、仰向けに寝転んで入っている夢だ

体は金縛りのように動かない

見上げる限りの夜空が広がっている

足音が近付いてきて、誰かが覗き込む

誰かの顔は影になって見えない

その人物は手に刃物を持っていた

夢はそこで終わった



「最近妙な夢ばかり見て困るんだ」

悪夢に魘されるのが怖く、オンボロ寮の周りを意味もなく散歩していたハルトは、隣を歩く人物を仰ぎ見る

「散歩、邪魔してごめんねツノ太郎」

「別にどうとも思っていない。どんな夢なのか話してみろ、人の子よ」

夜になると、人気がなく静かなオンボロ寮に度々遊びに来ているマレウスだが、ハルトの同行に悪い気はしないらしい

1人で散歩をするのも考え事をするのに良いが、たまには誰かと話しをするのも良いものだ

マレウスに促された小さな人の子は、少し眉を寄せる。

悪夢を思い出すのは気が乗らないが、誰かに話して吐き出したい気持ちも確かにある

相談したところで何か解決する訳でもないだろうが

「どうした?時間はいくらでもあるし、話してみろ」

と再び促され、ゆっくりと口を開く

「なんか、箱に入ってて…体が動かなくて…ちょっとずつ夢が進んでるというか…」

「夢が進む?」

「何回か同じ夢を見てると思ってたんだけど、少しずつ夢が長くなって、続きが見れるようになったというか…」

ハルトはマレウスの肘の辺りを掴む。マレウスは少し驚いたが、不安そうな表情をしているハルトの好きにさせてやる

「1番新しい夢だと、ナイフを持った人が近付いてきていて…」

「ふむ。それで、今日はその夢が進むのが怖くて眠れないと」

「ははっ…その通りです」

ハルトは不安そうなまま笑う

マレウスはそんな小さな人の子をしばらく無言で見下ろしていたが

「今夜は僕がついていてやろう」

と笑った



ハルトは夢を見ていた

狭い箱に、仰向けに寝転んで入っている夢だ

体は金縛りのように動かない

見上げる限りの夜空が広がっている

足音が近付いてきて、誰かが覗き込む

誰かの顔は影になって見えない

その人物は手に刃物を持っていた

ナイフがゆっくりと振り上げられていく

ハルトは小さな掠れた声で

「ツノ太郎…」

と祈るように呟く

ナイフが夜空を裂くように振り下ろされる

ハルトは目をきつく閉じる

瞼の向こう側で、翠色の光が爆ぜた

「ハルト」

名前を呼ばれ、目を開く

視界には一面に広がる星空…ではなく、汚れたオンボロ寮の天井とマレウスの涼し気な顔だった

「…ツノ太郎?」

「あぁ、ボクだ。呼んだだろう?」

ハルトはしばらくマレウスを見上げて呆然とする

「…なんでツノ太郎に抱っこされてるの?」

「さぁ?何故だろうな」

「…さっきまで、オンボロ寮の外で散歩してなかったっけ?」

「そうだな」

「いつの間にオンボロ寮にいるの?てか、僕、寝てた?」

混乱するハルトを見下ろして、マレウスは笑う

「まぁ細かいことは気にするな。もうあの悪夢は見ないだろう。」

マレウスはすっと指を伸ばし、ハルトの前で軽く振る

指先から零れるようにして光の粉が飛び、監督生の鼻の先で踊る

「ツノ…太郎…」

光に導かれるようにして、ハルトは深い眠りに落ちていく

マレウスはすやすやと寝息を立てるハルトを抱えたまま笑みを深め、窓の外に視線をやり

「相手がどうなったかは知らないがな」

と呟いた
















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