サボりだよ、仕事人!

人も居ない、閑散とした駅のホーム

一日が終わる一時間前ともなれば、暴れる者も居ないし静かなものだ

自販機で買った缶コーヒー2缶(ひとつ買ったら当たりでもう一本出てきた)のうち一つに手を伸ばす

「あー、ひま」

と思わず呟いてあくびを噛み殺すと

ベンチの隣に納まっていたエルフーンが肩に飛び乗って一声鳴いた

「なに、ふぅすけ。腹減った?」

『まだ仕事中なんだからぁ、怒られちゃうよぉ?』

なんだか咎める響きのある鳴き声と、苦笑いに近い表情

たぶん注意されてる

「人っこ一人居ないのに、大丈夫だろ」

ズゾゾッとコーヒーを吸い上げる

ふぅすけはエルフーンらしく口を緩めて笑っていたが、俺の後ろを見て、その口元を引きつらせる

「?どうした、ふぅす…」

「意外!君、コーヒー飲むんだ!」

「ゴフッ」

突如響いた第三者の声に、コーヒーが器官に流れ込んだ

『大丈夫ぅ?』

「ダメ、死ぬっぐふぉげふぁ」

ふぅすけに背中(首?)を撫でられながら、顔を上げる

ニヤニヤニマニマとしている人物

この顔は生れ付きか、それとも性格か。

地下を照らす頼りない白の蛍光灯の明かりの下、身に纏うのは俺の緑と違う、白

襟も長く裾も長い

サブウェイでこの人物を知らない者は居ない

だって目的はこの人であり、俺の働くここの…

「ぼ、ボス!」

よりにもよって、一番偉いさんに見つかるとか…

焦る俺とは対照的に上司は明るくニコニコ笑う

「僕、クダリ!君がサボってるの見ちゃった!」

ふぅすけが「あちゃ…」って顔でボールに逃げる

頼むから見捨てないで

「君がコーヒー飲むの意外!飲めなさそう」

「子供っぽいってことですか」

注意するでも怒るでもなく、ニコニコニヤニヤ楽しそうなボス

膝に重みを感じて確認すると、パチリスのメロリスが乗っていた

『最悪、僕が麻痺させて逃げるよ』

黒い笑顔

この地方で珍しいパチリスの登場に気を取られているボスは気が付いてない

「…メロリス、お前女の子なんだから…」

「君、いっつもこのベンチでサボってる」

「げっ」

俺の前に屈んで、メロリスの頬を突きながら、上目遣いでニヤニヤしながら俺を見ている。

メロリスは困惑顔で指を避けていた

「君、強いって噂聞いた。次の休みにバトルしてくれたら、給料減らさない!約束約束」

笑顔で小指を立てるクダリさん

「…それってバトルしなかったら…」

「給料なくなるかも」

「Nooooooo!!!」

強引に絡まされた小指

指切りげんまんと歌い上げる声を聞きながら、こっそりため息を吐いた

視線の先で缶が、所在なさ気に座ってる

今の俺と似たそれを、メロリスが短く白い両の手で掴んで飲む

「俺の分、残しとけよ」

視界の端で、当たりのコーヒーもクダリさんが開けているのが見えたが、気にしないことにした

あと半刻で帰りだ


☆☆☆
「ふぅすけ、お前覚えとけよ」
『給料減らなくてよかったねぇ』
「精神的に何かは減ったけどなちくしょう」

☆☆☆
指差し確認準備OK目指すは勝利出発進行ぉぉぉぉ
クダリは無邪気なバトル狂

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