ピンチとデコピン、君と僕

いくらこの場から逃げ出すために必死だったと言ったって、こんなのあんまりじゃないか

自分の感情とバトルの指示は別で、油断だってしていない

相性も技もタイミングもすべて間違っちゃいなかった

なのに

黒い竜の吐き出した息吹きに焼かれ、パートナーはごめんと呟きを残して倒れた

「ありがとう。戻って、ゆっくり休んで」

目を回したジャローダをボールに戻す音が虚しく響く

いつかと同じ

片方は瀕死になった子が居なくて勝って、片方は全員瀕死で負けた

だけど立場は正反対

Nは笑い、僕は俯く

負けたのは久しぶりで、ジャローダが気絶しちゃったのも久しぶり

だからか無性に悔しい

負けた相手が彼なのも、全部全部

「僕が勝った。だからハルト、話し、聞いてくれるよね?」

優しく穏やかな勝者の声を、敗者の僕が否定するすべはない

彼の近づいてくる足音が、バトルのせいで少し焦げ臭い空気を揺らす

黒い靴先が視界に入って止まるのを見てから顔を上げると、Nの右手が鼻先を掠めて

ビシッ

「…っ!!」

強烈な、強烈なでこピンをお見舞いされた

じわりと視界がぼやける中、彼の顔は見えない

「ねぇ、理由はわからないけど、君が突然居なくなって、僕はとても心配したんだよ?」

何か暖かいものが顔にあたる

「不安になったし、ハルトとこのまま会えないんじゃないかって怖くもなった」

ポタリポタリと、顔にあたる暖かい雫

「N。なんで、なんで泣いているの?」

僕なんかのために

僕は君を傷付けたくなくて離れたのに

「僕たち、トモダチでしょ?」

当たり前のことでしょ、馬鹿

そう抱き締められて、視界がさらにぼやけて歪む

あぁ、これじゃあ本末転倒なのに

「ハルト、君がどう思ったかは知らないし聞かないけど、今度いなくなったらただじゃすまさないから」

目の前の、柔らかな緑が震えていた



☆☆☆
トモダチってどんな関係なの?

わからないけれど

与えられるだけ返せるのが関係が、僕の理想

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