食事と城と真相、寂しい右手

目的もなく逃げまわるように旅をしていからか、いつのまにかこの地方をグルッともう一周していた

季節はすっかり夏になり、油断すれば日光で溶けてしまいそうだ

涼しさを求めて水タイプのダイケンキに水場を探してもらい、その周りを散策していたら良い場所を見つけた

勢い良く降り注ぐ水飛沫に、良い感じに枝を伸ばし木陰を作る大木…誰もいないし、避暑にはうってつけだろう

切り立つ崖から落ちる滝を眺めながら、さぁ昼御飯だと言う時に

『そういえば…』

とレシラムが首を傾げた

「どうしたの?」

『いえ…ハルト、そういえば私達、四天王は倒しましたよね』

『うん。確かに倒したよ。それがどうかしたかい?』

ジャローダとレシラムの青い瞳を見上げる

他の手持ちも食事を止め、首を傾げていたけど…

『…あ、チャンピオン』

とサザンドラが呟く

「え?サザンドラ、どういうこと?」

サザンドラは三つの首を見合わせて黙っている

この子は、進化する前から言葉のキャッチボールを見送りする子だった

傷つけないようにと、慎重に言葉を選びすぎる優しい子

隣にいたズルズキンが、そんなサザンドラの代わりに口を開くべく、僕に指を立てて見せつつため息を吐いた

『四天王は倒したが、その後はあいつの城にいた。つまり』

俺たちはチャンピオンとバトルをしていない

レシラムが頭上でコクコクと首を立てに振っている

隣のパートナーの沈黙が痛い

「…あぁぁぁぁぁぁぁ」

なんだか落ち込んできた

あわあわしだしたサザンドラと、食事を再開しているダイケンキが横目に見える

『あの…ハルト、また…挑戦しに…行きませんか…?』

と控えめに進言したウルガモスを見上げて顔をあげると、手持ち達がみんな首を達に振り頷いていた

隣を見ると

『まぁ、良いんじゃないの?お馬鹿さん。
そろそろ弱い相手とのバトルも飽きたんだよ』

僕らなら勝てる。と自信満々に言い放ったパートナーに背中を押されて、僕も大きく頷く

君たちとならどこまでも!!


☆☆
前を向いて、もう少し

☆☆
「ねぇハルト、どこにいるの?」

『……。』

あの日、観覧車から飛び出した彼の手を掴めなかった右手を握り締める

彼はあの瞬間から、僕らの前から姿を消した

「今度は」

僕が追い掛けて、

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