眉間と観覧車と想いの行き止まり

「このままじゃ、ダメだよね」

僕の呟きに、パートナーは何も言わなかった



Nは、一度は姿を消したこともあったけど、あれから僕の手の届く距離にいる

僕の家に泊まって、今日だって一緒に出掛ける

でもそれって

「ねぇ、どうしたの?ハルト」 

「え?」

少し遠出した、ライモンシティーの遊園地

いつかのように観覧車観覧車と騒いでいた彼が、僕の眉の間に指をぐりぐりと押しあててくる

「眉間、皺がよってる」

「あぁ、考え事していたんだ」

「嘘でしょ」

「……。」

人間と関わりの無かった彼が、よくもここまで人に敏感になったものだ

心根が優しくて、ポケモンに無償の愛を注げた人なんだから当然のような気もするけど

その優しさが今、僕に向いている

だけどやっぱりそれって

「ねぇ、ハルト…」

「N、観覧車乗ろうか」

「え、あぁ、うん」

戸惑う彼の髪が、背中でふわふわ跳ねている

彼の内心をまるで代弁してるみたい

僕に手を引かれて前屈みに、背の高い彼は躓きながら観覧車に乗り込む

「ねぇ、ハルト?やっぱり今日の君は」

「N」

彼はなんて言おうとしたのか…僕が遮ったからわからない

戸惑った顔で目を泳がせるNを見つめて笑顔を作る

「N、観覧車の外は広いしたくさんの人がいるね」

「…?うん。」

「地上に戻ったら…うぅん、後にする」

Nは不安そうに僕の手を握る

口の中でそっと、鳥かごから出て自由にお帰り。と呟く

観覧車はゆっくりゆっくり上昇していた


☆☆☆
君が何を考え、何を思ったのかがわからない

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