窓と笑顔、時々トモダチ
朝起きて、僕の部屋で一緒に寝たはずのNの姿が無かった
ぽっかりと一人分の隙間を残したお客さん用の真新しい布団が、やけに冷たく見えて恐くなる
まだボールの中で眠る手持ち達も置き去りにベッドを抜けようとすると、唯一ボールから出ていたジャローダが瞼を持ち上げる
「ジャローダ、Nがっ…」
『…ハルト、落ち着きなよ』
今にも飛び出さんばかりの僕を緑の艶やかな尻尾で抑えつけ、静かに冷静な赤い目で咎める
『荷物もある。手持ちもそこにいるし、…ほら深呼吸。窓を見てごらん?』
促されるまま深い呼吸を繰り返し、窓の外を覗き込む
優しい緑のふわふわを背中で跳ねさせて、彼はミネズミやヨーテリーと遊んでいた
何を話しているのかまでは聞こえないけど、時々笑顔も見られることにほっとする
『バカだね、君は。あんな男が居なくなったくらいで動揺して』
ジャローダがスルスルと隣に並ぶ
ジャローダに触れる右側だけが暖かい
それを嬉しく思いながらも、視線は動かず
「これじゃあ、プラズマ団と変わり無いね」
『?』
「彼を閉じ込めて、自分の傍にだなんて考え。恥ずかしいな」
『それだけハルトは大切に思ってるんだね?』
あの男を。と鼻を鳴らしたジャローダに苦笑しながら
「さぁ?」
と答える
それがトモダチと呼べるものなら
ひどく偽善的だ
まだ肌に冷たい空気のなかで笑う彼が、不思議と活き活きして見えて
「僕は、君が思うほどいい人ではないんだ。ごめんね」
ニンゲンのトモダチは、君の今までのトモダチより暖かかい?
☆☆☆
ほのぼのばかりだと私じゃない
でもハッピーエンドが欲しい
☆☆☆
「僕のトモダチはね、あの家でまだ寝ているんだ。また起きたら紹介するね」
君がそう、嬉しそうに僕の話をしていたことを、僕は知らない
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