風と涙と故郷

止まっていた風が吹き、空ではゼクロムとレシラムが再会を祝うように舞う

手持ち達もボールから出て、高台の小さな草原を走り回る

悪タイプどうし気が合うのか、ズルズキンとゾロアーク、そして進化したサザンドラは取っ組み合って遊んでいた

ジャローダは端っこで日光浴

遠くでギギギアルの歯車の音と、これまた進化したウルガモスの羽音が聞こえる

「久しぶりだね、ハルト」

それぞれの手持ち達から離れて、Nと二人

最初に口を開いたのは彼だった

「悲鳴が挨拶より先になるだなんて、思いもしなかった」

少し目を逸らしていうと、Nは笑っていた

草原と緑の髪が、背景の青にそよぐ

「追い掛けてきて、くれたんだね」

笑ってるけど、よくわからないって顔

僕じゃなくて、たぶん、自分自身が

「当たり前でしょ。勝手に居なくなったトモダチを探すのは」

僕らには当たり前のことなんだから

ベルもチェレンも君に会いたがっていたし、心配していたよ

「もちろん、僕も」

だから、見つかってよかった。と笑いかける

それから、ぽつりぽつりと僕らの会っていなかった間を埋めるように、二人で語り合う

嘘も偽りもあるだろう。楽しく愉快に話そうと

だけど最初はこれくらいでいいと思う

本音とか、もっと深い事は、これから自然と零れてくるだろうから

「N、君を見つけられて、ホントによかった」

「どうして?」

「さぁ。」

そこは教えてあげない

Nは少し不満そうにしてた

前より少し緩やかになった言葉で、

「ハルト、君は少し意地悪になったね」

「長い間君だけを探していたんだから。まだまだ覚悟しなよ」

誰かがバトルをしだしたのか、水しぶきや火の粉が飛んでくる

風向きがいつの間にか変わって、少し肌寒い

「僕が考えたくらい、僕のことを考えて答えを出しなよ、N」

夕陽で空は赤い

あの日とは違う

君の手を取れる距離で

僕は静かに問うて、

Nは、涙を零して、その問いに小さく小さく少し擦れた声で答えてくれた

「おかえり、N」

前はとれなかった手は、今確かに繋がっている



「帰ってきてくれる?ママに君を紹介したいんだ」

僕の大切なトモダチとして


☆☆☆
僕も泣いてばかりじゃないんだから

[ 15/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -