苦手と影と叫び声

ふわり。なんて優しい着地がこの世の何処に転がっているのか

半ば逃げるようにレシラムの背中から下り、しばらくぶりの地面にしがみ付く

『クスクス。そう怯えなくても、もうしませんって』

「…レシラム、これからは岩タイプかドラゴンタイプかどっちがいい?」

これからは弱点タイプとしかバトルさせてあげないよと脅すと

『ごめんなさい。許してハルト』

と少し笑いを堪えた謝罪が返ってきて、睨みあげてみてもレシラムはさらに体を揺すっただけだった

足に力は入らないし、腰は抜けてる

土と草の匂いを恋しく思いながら顔を上げる

海に浮かぶ小さな小さな孤島、その高台に僕らはいた

『大丈夫かい?腰抜けさん。』

「炎タイプか虫か飛行かと聞きたいところだけど、本当にダメ。お願いします」

未だクスクスと笑うレシラムに見守られながら、なかなかの悲鳴だったよと言いつつ手を貸してくれるジャローダに掴まって、なんとか立ち上がる

が、ジャローダに縋りついても立つのがやっとで、さらに膝は笑ってガクガクしている

「あぅぅ。」

『生まれたてのシママみたいだね』

『クスクス、本当に』

「決めた。二人の弱点をつける飛行+ドラゴンタイプにしよう」

『『ごめんなさい。』』

謝罪にしては声が震えてるけど気にしないことにして、なんとか歩きだす

高台の端に、巨大な影とその隣に人影が逆光で見えている

僕らに気付いているはずなのに、振り返らない背中

口元に浮かんだ笑みを噛みしめ

「やっと、見つけた」

風が駆ける

振り返った彼は、いつかと同じ僕の言葉に

いつかと同じ表情なのかな

「あの悲鳴、やっぱりハルトのだったんだね!」

僕以外の皆が一斉に吹き出し、Nは笑っていた




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