苦手と影と叫び声
ふわり。なんて優しい着地がこの世の何処に転がっているのか
半ば逃げるようにレシラムの背中から下り、しばらくぶりの地面にしがみ付く
『クスクス。そう怯えなくても、もうしませんって』
「…レシラム、これからは岩タイプかドラゴンタイプかどっちがいい?」
これからは弱点タイプとしかバトルさせてあげないよと脅すと
『ごめんなさい。許してハルト』
と少し笑いを堪えた謝罪が返ってきて、睨みあげてみてもレシラムはさらに体を揺すっただけだった
足に力は入らないし、腰は抜けてる
土と草の匂いを恋しく思いながら顔を上げる
海に浮かぶ小さな小さな孤島、その高台に僕らはいた
『大丈夫かい?腰抜けさん。』
「炎タイプか虫か飛行かと聞きたいところだけど、本当にダメ。お願いします」
未だクスクスと笑うレシラムに見守られながら、なかなかの悲鳴だったよと言いつつ手を貸してくれるジャローダに掴まって、なんとか立ち上がる
が、ジャローダに縋りついても立つのがやっとで、さらに膝は笑ってガクガクしている
「あぅぅ。」
『生まれたてのシママみたいだね』
『クスクス、本当に』
「決めた。二人の弱点をつける飛行+ドラゴンタイプにしよう」
『『ごめんなさい。』』
謝罪にしては声が震えてるけど気にしないことにして、なんとか歩きだす
高台の端に、巨大な影とその隣に人影が逆光で見えている
僕らに気付いているはずなのに、振り返らない背中
口元に浮かんだ笑みを噛みしめ
「やっと、見つけた」
風が駆ける
振り返った彼は、いつかと同じ僕の言葉に
いつかと同じ表情なのかな
「あの悲鳴、やっぱりハルトのだったんだね!」
僕以外の皆が一斉に吹き出し、Nは笑っていた
[ 14/554 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]