星見る君

小高い丘の上は何も遮るものがなく、風がある為雲も少ない

月のない夜、望遠鏡はたくさんの宝石を映し出す

あれが僕ら人の手に届いてしまったら、きっとただの欲に塗れた石ころになってしまうに違いない

「ね、そう思わない?」

「…知らない。」

「でも道具を使えばスゴく近くに見える。凄いよね!」

「そーだね。」

僕が少し興奮して話しても、横に座る彼女は興味など無さそうに相槌を返してきた

真夜中にポケナビで呼び出したせいで怒っているのかもしれない

メタグロスは地面に伏せながら呆れたように僕を見た

君も僕を理解できないと言いたそうだね

「考えてみてよナガレ!たった100km上にこの宇宙は広がっているんだ。凄く近いのに、とても遠い…。いつかは僕も行ってみたいな」

「…行けばいいじゃない。」

僕が貸してあげた防寒具とマフラーに顔を埋めて、潜持った声がそっけなく返ってくる

何だか拗ねた風の彼女の声に思わず弛む頬

あの宙(そら)に手が届いたら、どれだけいいだろうか

「何言ってるんだい?君も一緒に行くんだよ」

君と一緒に、という言葉が僕の台詞にはいつも前提になっていたのだけれど

驚いたように目を開いてから笑った彼女は、それにたった今気が付いたに違いない

「空から名もない星を一つ見つけるくらい難しいものを、僕はとっくの昔に見つけていたんだよ」

わかるかい?と問うと、ナガレは暗闇でもわかるくらい頬を真っ赤にして

「宇宙にでも行ってろ!」

と声を荒らげた

「だから君も一緒にだってば」

照れ隠しに忙しいナガレを抱き込み、望遠鏡を覗き込む

僕が星を見るのだって、昔、君が僕と見る星が綺麗と言ったからなんだよ?覚えてる?


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