とある男の幸せな朝

起きるのも億劫な朝だ。目覚まし時計を叩いて止めて、カーテンをチラリと見やる

透けて見える光は思ったより眩しく、合間から見えた青空と光を反射させる雲が煩わしくて瞼を閉じる

伸びをする気も起きなかった。体に残る倦怠感と眠気を払ってしまったら、いよいよこの暖かな毛布から抜け出さなければならない

うつらうつらとしながらも時折薄目を開けてみたりカーテン越しの空を見るのは、未練と葛藤と、ほんの少しの良心と

『----!!』

「あぁ、うん。起きてる」

元気に部屋へ飛び込み吠えた空色の生き物…大きな耳を揺らし黄金の瞳で見上げてくるコリンクに、掠れた声が答える

「起きてるよ…」

一向に起き上がろうとしない主人を見かねたのか、コリンクは身を屈めて自らの筋肉に電気刺激を与え始める

布団の中で身を縮めている彼は、コリンクが行おうとしていることにまだ気が付いていない

『-------!』

「?!」

コリンクは勢い良く床を蹴り、トレーナーに向けて高く跳び上がった…のだが、自分でも思ったより跳び過ぎたらしく空中に出てから手足をバタバタとさせる

トレーナーも自らの手持ちである発育不良のコリンクの暴挙に気が付き一瞬だけ呆気にとられたが、すぐに体を起こし手を伸ばし保護に向かう

小さなコリンクは、男の伸ばした手の平の中にころりと納まった

「お前ねぇ…まぁ、いいや。目が覚めたよ…」

男は呆れたように笑って、コリンクを軽く撫でる。怪我がないならイイよと呟いて

「さぁ、今日は何をして遊ぶか?」

カーテンを開けて、体を伸ばす

男の手に納まったままのコリンクは何やら鳴いて、男に答えている

バトルがまともにできない、発育不良で体が通常の個体よりも小さなそのポケモンは、それでも幸せそうに目を細める

男もそれに気が付くと、困った様に眉を下げて笑うのだ







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