はじまり、ゆがむ

くるくる、ぐるぐる

くるくる

ぐるぐる

鉄のゴンド ラは同じところを同じ速度で何度も何度も回る。留まり も休みもせず、くるく る、ぐるぐる

それは時計 のようであり、歯車のようであり、車輪のよ うであり

形無きもので 例えるなら、時の流れで あり、定められた運 命をなぞるようでもあり…

Nは、歪みないもの が好きだ。まぁる い円。揺るぎない正方形。

人間は、歪む。揺 らぐ。

彼に とって、理想はトモダチであるポケモ ン達であった。歪まない。揺るが ない。

ポケモ ン達があるが ままの姿で、自らの世 界を生き抜くこと こそが美しい

人間と共にい るのは、円を凹ませるようなもの。四角を削る ようなもの

彼はひ どく単純にいうならば、賢かった。彼に解け ない数式はなかっ た。理解できない数式はなかった

彼の『=』が間違ったことはなかった

だか ら、彼は 正 し い と思 っていた。

自 分こそが 正 し い と思 っていた。

自分 こそが、間違った人間 を正せると 思っていた

「そんなことは、させない。」

『僕だって、そんなことは望まない』

旅に出た ばかりの少年は、背の高いNを見上げてはっきり と告げた

彼の隣 に腰掛けて いたジャノビーも、Nを睨み あげてそう少年に 続いた

Nには 理 解 で きなかった

彼のセ カイのト モダチ達は常に人間に怯えていた。あの部屋の中で 傷 だらけで震え て縮こまって、時にはNに牙や爪を立てた

酷い時 は自らの力を使い、彼らはNに攻撃した。時 には火傷を負い溺れかけ殴られ蹴られ、 体が麻痺したり 動かな くなったり、血だらけになったり痣 だらけにな ったり

それでも Nは、ポケモン をトモ ダチだと言った。恨まなかった。 愛 し て いた。

ポケモ ン達も、トモダチになった。Nを理解すると、Nを 愛 した

それ こそが正しいとN は思っていた

だから、少年の、ジャノビーの、言葉の意味がわからな かった。

「ボクは、この世界を変える」

Nは 告げた。 歪みな い円の中、少し揺れる観覧 車の中で

Nは気 付い てい た のかもしれない。本当は、理解したくな かったの かもし れない

ポ ケモンと人間が、トモダチになれる可能性。数字では現 れない 不 確 定要 素。

傷 だらけになって も すぐに 愛 されないNと違 い、出会った頃から仲 良しこよしをするトレーナー達

これでは、Nは報われない。不公平じゃない かと、第三者 であるとある 男は言ったであろう

これは所詮、主軸とさ れるストーリーの 外側の話であり、決して誰もが知るわけでは ないのだが

とあ る男は、舞台 の裏 側で息を潜めながら言 うのだ

「ツタージャ少年と、王子様、どっちの言うことが正しいんだろうな…」

くるくる

ぐるぐる

登った ゴンド ラは、下がり始 めている



☆☆☆
青年はプラズマ団の王様として
少年はそれを止める者として
役が与えられ回り始める

クラウンは間抜けに、舞台で踊ればいいのだ

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