似ている男

結論から言えば、クリームはチェレンの手持ちポケモンをたった一匹で無双してみせた

うちのクリームは耐久を鍛えてある

技構成は、とける、どくどく、火炎放射、小さくなる
相手の技はすべて避け、万が一喰らってもダメージを最小限に抑え、相手が疲れ果てて倒れるのを待つバトルスタイルを基本にしている

ネタバレしてしまえば、レベルの差も考えてこちらが受けきれない技なんてなかっただろうし、最初から負ける予定なんてなかった

チェレン少年のパートナーと思われるダイケンキは多少粘っていたが、結局クリームの弱点をつけずに倒れた

「いやー、惜しかったね。てなわけで、約束通り俺は何も喋らないからな」

「……。」

チェレン少年はぶすくれて口を結んでいる

クリームがこちらに寄ってきたのでボールを見せてやると、自分で戻った

楽しかったか?と聞いてやると、ボールがカタカタと揺れる。

どうやら、満足したみたいだな。最近はバトルに参加してないから、いい運動にもなっただろう

遊園地の乗り物にも殆ど乗れてないし(公共の場に毒を撒き散らすわけにはいかない。し、規制も厳しいのだ)クリームだけ楽しめないのも不公平だ。

バトルで満足したなら良かった

ボールをホルダーに戻す間も、チェレン少年は口を結んだままだった。何かを思い詰めたように、ほの暗いものが瞳に影をさす

ほんと、こいつは俺に似てると思う。すぐに考え込む癖や、一度躓いてしまうと立ち直りに時間がかかるところ…挙げていけばキリがないかもしれない

俺に似ているが、チェレン少年は強い。ポケモンバトルもそうだが、自らの掲げる理想をしっかり見据えて、着々と進んでいける。

それに若いうちってのは、何回失敗しても後に笑い話になれば良いんだ。

ベルちゃんやツタージャ少年と同じ目をしている彼を見つめて

「チェレン少年、1つだけ教えてやると」

俺は味方でもないが敵でもないよ。

そう、あくまで軽く、笑みを浮かべながら言ってみる。変に俺のことで悩んだりせず放っておいてくれたらいいのに

味方はしないが、邪魔をしないくらいの配慮はしてやるし、わざわざ正面から釘を刺しにこなくてもベルちゃんやツタージャ少年に手出ししないのに

よほど俺の邪魔をしなければ、ではあるが。

「…信用出来るわけないでしょ」

「そーだろーね」

「………。」

何その呆れ返った顔。

ボールから勝手に出てきたマスカットが俺の鞄をあさり、傷薬やオレンの実を取り出してチェレン少年の前に持っていく

チェレン少年は若干呆気に取られたように緑色を見詰めていたが、少し困った様に笑ってそれを受け取った

「まぁ、勝ったのは俺だから」

ここから先は秘密。なんて、人差し指を立てて唇に当てわざとらしく気取ってみる

チェレン少年は普段とは違い、年相応の少年のように肩を怒らせて目尻を吊り上げた

「僕は、あなたが嫌いです!」

「ははっ、堂々と言ってくれちゃうのな」

「大っ嫌いです!」

チェレン少年の目に、もうほの暗いものは無かった

言い終わるが早いか、くるりと踵替えして足早に去っていってしまう

ポケモンセンターに急ぐのだろう

バイバーイと手を振るマスカットと一緒にしばらく遠のく背中を見ていたが、ボールから出てきたカスタードに服の裾を引かれ遊園地の喧騒に戻された


☆☆☆
変に気を遣ったように笑うのも
おどけながら優しくするのも
諭すような態度も
全部知ったふうな顔も
ポケモンバトルが強いのも
全部全部気に入らない!
大ッ嫌いだ!!


[ 97/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -