登りたい
さぁ、今日こそはたどり着きましょう!私のバトルフィールドまで!
ショウヨウジムは、アスリートであるザクロさんのトレーニング場にもなり挑戦者をふるいにかけることができるように、特別な作りとなっています
ゴツゴツ岩がせり出した巨大な山を登り、ジムトレーナーを倒しながら、頂上にいるザクロさんのもとまで辿りつかなくてはなりません
それがとにかく馬鹿でかいんです!ちょー高い!
しかーし!ショウヨウジムのトレーナーである私、ナガレは今日こそ!今度こそ!目の前の反り立つ壁を登りジムトレーナーらしくバトルをするのです!
何故そんな必死に自分を鼓舞するのかと言われれば、答えはとっても簡単。私、高いところが苦手!
でも大丈夫!ロッククライミング中でも、下を見なければ高さなんてわからないのです!上だけ見てれば大丈夫!
高さなんてわからない!高さなんて、高さなんて…
見上げて掴んでいた色とりどりに塗られた突起物に力を込めます。あぁ、なんか手が滑るなぁ…
いま自分が地上からどのくらいの場所に気になり始めたら、どうにも気持ちがざわついて呼吸が荒くなります
嫌な汗が体中から噴き出してきた気もします…あはは
少しだけ、少しだけ高さを確かめてみようか…なんて思ったのはもちろん間違いでした
ちらりと見やった地面は思ったよりも遠くて、視界がぐるぐる回りそうです
今、手を離して足が滑ったらどうなるんでしょう……
…………
…?
…!!!!!
「助けてくださぁぁぁい!!!」
足がすくんで動けなくなった私は、結局いつものように叫んでしまいました
「ザクロさぁあぁぁん!」
「ナガレ、何故いつも私なのですか…」
そしてジムリーダーに救出してもらいました…
「ナガレ…」
ザクロさんを見上げると、呆れたような怒ったような顔をしていました
毎度毎度、持ち場に行けない私に、きっと怒っているに違いないです…
「ご、ごめんなさい」
「はぁぁ…」
ザクロさんは、長ぁく息を吐きだしました
びくりと肩が震えます。ザクロさんはとても、困った顔をしていました
「ナガレ、落ちたらどうするんですか…?努力することは素敵ですが、きちんと手順を踏ま無ければ危険です」
「でも、」
「でもではありません。あまり心配させないで下さい。」
「はい…」
よしよしとザクロさんに頭を撫でられます
結局私は挑戦者が登る壁の前でバトルを待つ事になりました
また今日もダメでした…と落ち込むのは当然なのです
だってだって、岩タイプのジムのトレーナーなのに、この岩を登れないなんて!足場を活かして戦えないなんて!情けないですぅ!!
「ナガレ、気落ちしないで下さい」
「ザクロさん…」
ザクロさんは、少し首を傾げて微笑みました
「誰でも苦手なものは有ります。わたしなら……甘いものを我慢するのが苦手です」
「甘いものが、ではなく?」
「はい、甘いものを我慢するのが苦手です」
ザクロさんは、冗談ではなく、本気で言ってみえるようでした
そういえば、クッキーを片手に物凄い怖い顔をして眺めていることがありましたが、それはクッキーを食べまいと頑張っていたんですね
「あはは、それは大変ですね!」
ザクロさんは笑い事ではありませんよと苦笑いをしていました
運動全般が得意でスタイルも良くてバトルも強くて…そんなザクロさんにも、苦手なことってのはあるらしいです
ほんの少しだけ励まされて、心が軽くなった気がしました
余談ですが、挑戦者は誰一人として壁を登ることなく帰られました
私のアマルスとメレシーが無双したからですね!腹いせではないですよ。断じて腹いせではないです
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