もやもや

私が息を吐き出すと、それは白く立ち上り夜空に混じって消えた

ノボリボスも同じように息を吐きだす。ただ、彼の唇から白く立ち上るのは、私と違うもの

「たばこ」

「はい?」

「ノボリボスも吸うんですね」

なんか意外です。と彼を見上げると、ノボリボスは煙草を軽く咥えて首を傾げる

「嗜む程度にでございますが」

苦手な方でしたか?と尋ねられ、えぇ、まぁ…と曖昧に答える

ノボリボスが胸ポケットから携帯灰皿を取り出そうとしたので、慌てて止める

「あ、消さなくても大丈夫ですよ。家族が吸うので慣れてますから」

「では、こちらへ」

風上に回ってくださいまし。

彼に手を引かれ、ノボリボスの右隣から左隣へと移る

ノボリボスは煙の向きを確認してから、息を吐いた

白い煙が月にまとわりつくのを見ながら

「あまり吸わないなら、禁煙した方がいいんじゃないですか?」

と聞いてみる。ノボリボスは少しだけ困った様

「時折そう思うのですが…極たまに吸うくらいなら良いかとつい止められないのでございます」

そうなんですか、と相槌を打つ

ノボリボスは人差し指と中指に挟んだ煙草を見つめている

「でも、なんか罪悪感ありません?」

「?」

「なんかこう、不健康なのをわかってても止めづらいじゃないですか。ほら、私ならお酒とか」

「…チュウハイ一杯で潰れるような方ですのに、飲んでみえるのですか?」

「忘年会のことは忘れてくださいよ」

少しむくれて言ってみると、すみませんとノボリボスは肩を揺らす

「極たまに少しだけ飲みたいんです」

「そういうものでございますか」

「そういうものでございましっ」

口調を真似ると、また肩を揺らしていた

いつもより自然体なノボリボスはなんとなく新鮮で、少し嬉しい

「まぁ、喫煙はどこへ行っても歓迎されませんし匂いが衣類につくのも好みませんので、禁煙した方が良いのでしょう」

「たばこを吸う仕草は好きですけどね」

手首のシナとか指先とか見とれちゃいます

煙草を吸う仕草を真似てみる

ノボリボスはほんの少し不思議そうにしていた

「やはり、タバコの匂いが苦手でございますか?」

「匂いもですが、まぁ、煙たいっていうんですかね?目が痛くなるんですよね…涙が出るくらい」

「おや…ナガレ様は目が大きいですからね」

ノボリボスを見上げると、何てことないように見返される

自意識過剰じゃないが、少し恥ずかし嬉しって感じだったんですけどね…

「それって褒めてます…?まぁ、目が大きいとゴミがダイレクトアタックして来ますからね」

時々ですけど、切れ長な目とかだったら良かったのにって思いますもん

「ノボリさんは切れ長な目ですよね。かっこいいです」

「平然と言われると照れてしまいますね」

「奇遇ですね、私も先程からなんか恥ずかしくなってきたところです」

ノボリボスはそれはすみませんと笑ってから、タバコの灰を指先で弾いて携帯灰皿に落とす

名残惜しそうに吸殻も灰皿に捨ててから、さてと。と長い息を吐いた

「……、そろそろ戻りましょうか」

「そうですね。」

夜勤の休憩時間も、あと数分で終わってしまう。いやはや、時の流れは早い

「ところで、ナガレ様」

「はぁい?」

「煙草を吸われないのに、どうして外に出ていたのでございますか?」

ノボリボスのただただ不思議ですと言いたそうな表情を見上げる

「……、煙草を吸う仕草が好きなんです」

「それは」

「さらにいうと、まぁ、ノボリボスの煙草を吸う仕草が特に好きですね」

「…………、」

ノボリボスはぽかんと口を開けていた。

彼にしてはかなり珍しい表情だ。特殊型のガブリアスくらい珍しい。

「なんて、ね?」

と首を傾げて誤魔化してみる。手遅れだろうけど

ノボリボスは口を閉じると

「ナガレ様、責任を取ってくださいまし」

私を見下ろしながら、真剣な表情で続ける

「これでは、禁煙が出来ません」

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