ぐる、ぐる、ぐる

楽しそうにはしゃぎ回るマスカットの手を握り、逃がさないように力を込める

本人もとい本ポケモンは不満そうにビービーと喚いていたが

『---!!』

「待て…待てマスカット…お前のせいで真っ直ぐ歩けないんだよ…」

『---!!!!』

「お前がサイコキネシスでコーヒーカップを回転のパワーで危うく空飛ぶほどぐるんぐるんにしたせいだろうが!次は絶対お前とは乗らないからな!行くぞレントラー…お前まさかコーヒーカップに乗りたいのか?」

『---。………。』

「…乗りたそうだなおい。」

何か言いたそうなレントラーの恨めしそうな視線を流し、無視を決め込み歩き出す

未だに目が回っているためか、視界が右へ左へとぶれて地面が揺れているかのように感じる

足音がついて来ない為後ろを確認すると、レントラーがやけに尾を下げてショボンとしている気がする

俺が悪いのか?

早く早くと急かすマスカットを宥め、レントラーを呼ぶと、しぶしぶ歩いてくる

「…観覧車に乗るぞ、レントラー」

『!!』

下がっていた尾が跳ね上がった

キラキラと効果音が付きそうな程目を輝かせて、手をすり抜けたマスカットと共に観覧車に走り出していくレントラーを見つめる

「そーいや、昔からあいつは変なとこだけ素直だったな…」

思わずそう呟いてから、2匹に続く

…2匹の向こう側に、なんか見知った緑とウルガモスが居るんだか…



「やぁ、レントラー。カナタと仲直り出来たのかい?」

「…、N様。こんにちは。」

「あぁ、うん。」

声をかけられて初めて気がついたとばかりに、ついでのように軽く挨拶された

王子様…俺の扱いひどくね?

レントラーは王子様を見上げ、何かを話し始める

王子様はしばらく相槌を打っていたが、やがて穏やかに微笑んだ

「……、本当に」

仲直りしたんだね。

そう慈愛に満ちた目でレントラーに言う

レントラーが何を話したかは知らないが、N様はどこか嬉しそうに俺を見た

「カナタ、レントラーはマスカットみたいに名前が欲しいって」

「………、」

思わず目をやるとレントラーもこちらを仰いでいて、視線が絡む

レントラーは何も言わなかったが、期待するように急かすようにただ見つめてくる

『……。』

「…カスタードだな。」

レントラーの尻尾がピンと立ち上がる。ヤバイと思う前に飛びつかれていた

あまりの勢いに支えきれず押し倒され、胸元に頭を押し付けられる

気に入ってくれたのは何よりだが、そのコリンク時代の甘え方で襲ってくるのはどうなんだお前

「カナタ、甘い物が好きなの?」

「へ?まぁまぁです。」

「………。」

N様は何やら言いたそうにしていたが、結局黙り込んでしまった。俺なんかした?

『‐‐‐!』

突如吠えたレントラーを見ると、どこか誇らしげに何かを訴えてくる

通訳してくれないかと王子様を見てみたが、微妙な顔をするだけで答えてくれない。なんなの

カスタードにどいてもらい、立ち上がる。打ち付けた腰と尻が痛いが、悪意は無かったので我慢することにしよう

「まぁ、いいや。観覧車に乗ろうよ」

「へ?はぁ、はい。」

王子様は腑に落ちないと言いたそうな顔をしながら、なにか諦めた様に首を振る。なんなんだよ。

カスタードとマスカットに押され引かれ、観覧車に乗り込む

「カナタに、昔のこととか聞きたいことは沢山あったけど」

レントラーとも仲直りしていたし、何も聞かないことにするね

そう、上昇していく箱の中で王子様は景色を見ながら言った



☆☆☆
カナタは、個体値が平均以下で発育不良で使い物にならない俺を拾って強くしてやると言ったんだ
カナタは、強くなれた俺を見て、よくやったって笑ってくれたんだ
カナタは、
カナタは、

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