友達以上

無免ライダーのピンチを第六感で感じ取り、家から飛び出す

案の定、一般人に毛の生えた程度の力しか無いくせに一軒家程の大きさの怪人に自転車(ジャスティス号)を投げ付けているじゃないか

盛大な舌打ちをかまして、右手を怪人に翳す

タツマキ程ではないがサイコパワーを持っている俺にとって、あんなもん敵じゃない

右手を握り込むと、内側に向けて圧迫された怪人がぐしゃりと弾け飛ぶ

突如肉塊になった怪人にぽかんとしていた無免ライダーに

「いい加減学習しろ!」

と怒鳴る

なんでいっつも勝てないのに怪人と戦おうとしてんだよ!馬鹿じゃないのか!!?と畳み掛けるこちらをいなして、無免ライダーは笑った

「でも、毎回助けてくれるでしょ」

「……っ!!」

無免ライダーの言う事は、悔しいが当たっている

正義の為ならどんな事にでも突っ込んでいく無免ライダーのことは、コイツがヒーローになる前から知っているし

毎度毎度懲りずになにかしら半殺し状態になっているこいつを助けてきたのも俺だ

「今回も助かったよ、ありがとうハルト」

無免ライダーは毎回律儀にそう礼を伝えてくれる。その点はこちらも悪い気はしない

「…はぁ。まぁ、幼馴染みだしなぁ」

行きがけに引っ掴んできた救急箱から包帯とガーゼと軟膏を取り出す

簡単な処置も、無免ライダーのおかげですっかりおぼえてしまった

適当な瓦礫に座って大人しくしている無免ライダーの前に膝をつき、とりあえず目立つ顔の傷に触れる

もう少し俺の力が強かったなら、こいつが怪我をする前に助けに来れたかもしれないのに

「ハルトは色々できるんだから、俺みたいに毎日パトロールしてたらランクも上がるだろうね」

無免ライダーは唐突に、明るい声で言った

一瞬だけ止まった処置の手を動かしつつ、無免ライダーを見上げる

ゴーグル越しに目が合う

「…俺はお前がヒーローになれっていったからなっただけだ。この力も好いてなかったし。」

「それでもS級だもんね。」

「ほとんど活動しないし最下位だけどな。お前と違って人気者じゃねーし」

無免ライダーの表情が僅かに曇った

「ハルト」

「あ?」

「いつもありがとう」

「…っ!」

今度こそ、手が止まった

無免ライダーはにっこりと笑う

「俺がピンチになるといつも駆け付けてくれて、ほんとヒーローみたいだよ」

「…まぁ、ヒーローなんだけどな」

「それはそうなんだけど」

腕に出来ていた大きめな擦り傷に消毒液を吹き掛ける

油断していたのか、無免ライダーは僅かに顔を歪めた

「とりあえず、俺をこれ以上心配させてくれるなよ。無免ライダー」

これからも助けてやらんこともないがな。と軽く笑ってみる

また無免ライダーは笑顔を潜めていた。真っ直ぐに俺を見つめて、今度は不満そうだ

「ハルト」

「あ?」

「俺の名前で呼んでよ」

無免ライダーは、ただただ不満そうにこちらを見下ろしていた

時折

時折、こいつは俺の気持ちを知って弄んでいるのではないかと、思ってしまうことがある

もちろん、無免ライダーがそんな事をする程意地の悪い奴だとは思わない。
が、ほんとに時折だ

俺が昔から無免ライダーに恋愛的好意を向けているのを知っていて、試しているのではないかと考えたくなることがある

結局、俺は

「やだね。」

とだけ返した

名前で呼ぶだけでも、何かを踏み越えてしまいそうになる。

無免ライダーは、ヒーローは皆のもんだ。無免ライダーと俺が意固地に呼ぶのは、自分にそう言い聞かすため

我ながら馬鹿だとは思ってる

包帯を巻いた所を強く叩く。

今度こそ声を上げて顔を歪めた無免ライダーに笑いながら

「C級1位の無免ライダー」

「ハルト…」

「無免ライダーが無茶したら、エスパーな俺が助けてやるよ」

ヒーローとして、俺は笑う

無免ライダーは俺の手元を見て口を結んだ



☆☆☆
恋人未満

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