プラズマ団の休日
ベッドで寝たにも関わらず、体のあちこちが痛むのは歳のせいだろうか。まだまだ若いつもりだったんだが…
ポケモンセンターの清潔感のあるシーツの上で背伸びをして、カーテンを開ける
少し値が張るが個室を選んだだけのことはあり、のんびりと過ごすことができたのは幸いか。
値が張ると言っても、トレーナーには子供も多い為大した程ではない。あくまで共同部屋に比べて、ということだ
やはりというか、呆れた表情を浮かべる手持ち達の視線をいなして洗面所へ行く
寝ぼけ眼のぼんやりとした男が鏡に映る。
「冴えない顔。」
備え付けのカミソリで薄く生えてきた髭をそり、適当に水で髪を整える
寝癖が頑なに撥ねていた
施設にいた頃は見た目なんか気にしていなかったが、髪はそろそろ切るか結ぶかした方が良さそうだ。邪魔くさい
簡単に身なりを整え、用を足してから洗面所を後にする
手持ちたちが欠伸をしながらこちらを見ていた
「さて、行くか」
チケットは大人一人と、ポケモン数匹分。そこまで大型のポケモンがいなかった為、高くはなかった
マスカットに強請られ、ポップコーンを購入してから奥へ進む
久々に訪れた遊園地は、思ったより人がごった返しており騒がしかった
どこからか聞こえる軽快で間抜けな音楽の先ではポケモンを模した乗り物が回っており、見上げたレールでは悲鳴を引きずりながらジェットコースターが走る
空飛ぶゴマゾウを模した飛行機や、キャモメを携え大きく揺れるバイキングと、様々なアトラクションが並べられている
家族連れやカップルが肩を並べて次の乗り物を探している光景に、ほんの少し寂しくなる
俺も、人間の連れが欲しかったなぁ…別にこいつらとじゃイヤってわけじゃないんだが
誤魔化すようにボールを軽く叩くと、レントラーのものがカタカタと揺れた。意外に楽しんではいるらしい。
きゃっきゃと笑いながら、色とりどりの風船を楽しそうに揺らして歩く子供と小さなポケモンを眺める
『---!』
「何?あぁ、観覧車ね 」
マスカットは、俺の言い様のない寂しさなど全く関係なく引っ張って遠くに見える観覧車を目指し始めた
ポップコーンは既に無くなったらしい
感傷に浸る暇くらいくれても良さそうだが…マスカットのことだ、察して敢えて無視してくれているのかもしれない
久々に遊園地なんて場所に来たためか、昔、あの施設に入る前にただ我武者羅にバトルして笑っていられた日々を思い出して懐かしく思ってしまった
ポケモンが居るだけで、何処にでも行けて何処ででも楽しめたあの頃が懐かしい
マスカットに半ば引きずられながら、苦笑いを浮かべる
勝ち負けに囚われず、どんな子でも愛せるだけの強さが俺にあったなら、今でも気楽に笑えてたのかもしれない
パソコンの預りボックスも、一度整理しなければ
☆☆☆
気が付くと、観覧車ではなくコーヒーカップの列に並ばされていた
マスカットがやけに笑顔なんだが、生きて帰れるだろうか…
サイコキネシスで高速回転させられそうなんだが、どうなんだ?
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