微笑みと睨み
僕がジャローダに支えられて立ち上がった頃、チャンピオンとチェレンはゲーチスの両脇を抱えて、ジュンサーさんに引き渡すと言った
Nは利用されていただけだからと僕が弁解する前にアデクさんは
「彼は利用されていただけだ。
しかし、君がポケモンのためにと動き、ゼクロムと共に英雄となったのは君の意志だ」
だから、これからも君の意志で選びなさい。と告げた彼の目はとても穏やかだった
放浪のチャンピオンは目を細めて、それ以降何も言わずに微笑む
Nは黙りこくって、遠くを見つめ思案顔を作っていた
その様子を眺めていると、ぽすん。と何かが僕の頭に落とされる
いつのまにか隣に来て僕の頭を撫でたチェレンに、ジャローダが威嚇して
『ハルトに気安く触るなメガネ』
と蛇にらみを始める
「出会ったときからだけど、たぶんこいつ僕のこと嫌いでしょ。」
『僕より先に、ハルトに出会ってるっていうのがまず気に食わないんだよ』
「もぅ、やめなよ。とりあえずジャローダ、蛇睨みはダメ」
幼なじみは最後に一睨みジャローダにくれてから僕を見ると、チャンピオンと同じように穏やかに笑った
「ハルト、言いたいことは沢山あるけど…ここまで1人で、よくやってくれたね」
そう目を細めて言われ、驚いた
チェレンには、こっぴどく怒られると思ってた
心配しただろ何してんだ無茶ばかりしてもし君が負けたらどう責任を取るつもりだったんだ何を考えてるんだ
そう怒鳴るチェレンが頭のなかにはっきり浮かんでいたのに
「ごめんね、力になれなくって。じゃあまたね」
ゲーチスの派手な袖を引っ掴んで遠く離れていく背中が滲んでいく
『たく、やっぱり気に食わない』
ハルトを泣かせるだなんて
パートナーの優しい声がそう言って、僕のまわりでとぐろを巻いていく
人間で言えば、腕を広げて待っていると解釈していいのだろうか…なんて考える間もなく、彼の首もとに顔をうめる
連続でバトルに出たせいで少し焦げ臭いけれど、ジャローダのいつもの匂いに安心した
「僕は思いの外、たくさんの人に支えられてるね」
『何をいまさら』
止まらない涙をジャローダが舌で拭ってくる
「ハルトが羨ましいな、僕も…」
そうNが遠くで呟く
「馬鹿だね、N。君はもぅ僕らのトモダチなのに」
何を今更。なんておどけて言えば
泣きながらじゃ説得力がないよと返された
ひどいな。誰か涙を止めてくれ
☆☆
チャンピオン「俺、微笑みのみww」
ゲーチス「喋ってねぇwwww」
[ 9/554 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]