終わりと化物

「ありがとう、ジャローダ」

「戻れ、ゾロアーク」

互いの最後の一匹を戻す

僕の手持ち達は傷だらけだけど、誰一人として瀕死にはなっていない

それに対し

「…僕が、負けるなんて…」

と、どこかを虚ろな目で見つめているN

彼に近づき、目を回している彼のポケモン達を回復してやりながら

「君の理想は好きだけど、現実的じゃなかったよね」

と声をかける

うつろな目がこちらを見る

「Nは、極論だったから。君みたいにポケモンとトモダチになれる人もいれば、道具としか扱えない人もいる…
ポケモンと話せるのは珍しいし凄い事だけれど」

N…君は少し気負いすぎたんだよ、たぶん

そう続けると、Nは僕と視線を合わせたまま少しだけ表情をゆがめた

「そう、かな…」

「そうだよ、たぶん」

おまたせ、と声を掛けてから僕のポケモンにも傷薬を与える

何か考え込み出したNを横目に、手持ちの回復を行っているとハルト!とジャローダが鋭く鳴いた

カツン、カツンと、静かに足音が近づいてくる

「この計画のためだけに育てたのに、とんだ役たたずでしたね」

「…ゲーチス」

『嫌なやつが残ってたみたいだね、ハルト』

「激しく同感だよ」

ゲーチスはベラベラと喋り続けていた

Nの過去やプラズマ団の過去。そして自らの目的について

全てがゲーチスだけの理想の世界を創る為の駒でしか無かった…全てが利用されただけ…それが真実

ポケモンもプラズマ団も、Nも誰も望まない世界の為に彼らは利用されたんだ

ゲーチスは自らの計画の為に、Nの人格まで作りあげたのだと言った

だけど、失敗作であると。人の心を持たない出来損ないであると、大男は彼を嘲る

何も聞こえないように、Nの耳を塞いでしまいたかった。この男の声を消してしまいたかった

けど、Nは目を逸らさずゲーチスを見ていた

最後に放たれた

「化け物」

その単語を否定も肯定もしないN

まるでその言葉を当然のように受け入れようとしているみたいで、無性に悔しくてNを見つめて手を強く握り込む

首を高くもたげて威嚇するジャローダに並び、大男を睨み上げると、相手は口元をゆがめて笑った

「ゲーチス、証明してみなよ、あんたの悪を」

僕がきちんと潰してあげる

その言葉に、この空間で笑ったのは誰?


☆☆☆
何で否定しないの?
優しい君が傷つくの?

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