オシベとメシベの云々について

突然背後から襲ってきた衝撃に、ノボリは少しの間驚いたように目を丸くした

自らの腰に回されたものを確認するため視線を下げると、このサブウェイの制服である緑色が見える

黒いコートを颯爽と翻し事務室に向かうノボリの歩みを引き止めたのは、どうやら彼の部下であるらしい

ため息を吐いたノボリは、自らに抱き着く腕の主を振り返る

「おや、あなた様はハルト…のメタモンではございませんか」

『---!!』

メタモンは自らのトレーナーの姿で、ハルトが絶対に見せないような泣き顔でノボリを見上げていた

「どうか到しましたか?」

ハルトの姿をした彼のメタモンはその問いに、目に涙を浮かべて大きく頷く

ノボリが、眉間に皺を寄せた

ハルトのパートナーであるこのメタモンはバトルでも頼りにされており、余程の事でもない限り泣き言一つ言わず働く頼もしい職員の一人だ

つまりは、余程のことがあったのだろう

メタモンに詳しく事情を尋ねようとノボリがその長身を屈めた時

「無理無理無理無理!そんなの無理! 」

と切羽詰った叫び声をあげながらメタモンのトレーナーが走ってくるのが見えた

そしてその後ろから、ノボリの良く知る白いコートも続く

メタモンが明らかに怯えてノボリのコートの裏に隠れた

「大丈夫だよハルト!ヤれば出来る」

「何爽やかに言ってくれちゃってんの?!出来てたまるか!!」

事務室に続く通路は関係者以外立ち入り禁止である為、直接業務に関わったりお客様に迷惑をかけるの事も無いだろうが、あまりの騒がしさにノボリは眉間の皺を深くする

「何を騒いでいらっしゃるのですか…静かにしてくださまし」

『---。』

ノボリの注意にハルトは怯んだ様に一瞬足を止めた

しかし、ちらりと顔を出したメタモンと目が合うと表情を一変させ、安心したように笑顔を見せ駆け寄る

「メタモン!どこに行ったかと!」

『---!!』

すぐさま駆け寄り、ポケモンとトレーナーが互いの無事を祝い抱き合う

薄々気が付いているとは思うが、ノボリは目の前の感動ドラマさながらの包容を眉間に皺を刻んだまま眺めていた

説明が来い。

と彼が思ったかは謎だが、とりあえず彼らと自分の弟が何かしらの問題を抱えていることだけしか理解ができていないのは確かだった

クダリがいつにも増してしかめっ面なノボリと喜び合う2人を見て笑みを深めたと同時にハルトは飛び上がり、何故かピカチュウに変身したメタモンを抱え上げて黒いコートを掴む

「助けてノボリボス!」

「おや、なんでございますかハルト」

「メタモンと俺が犠牲になる!」

『---!』

ノボリは無言でハルトを見下ろす

彼らが必死なのはわかるのだが、何が起きているのかさっぱりわからない

クダリは何故かいい笑顔で静かに距離を詰めていた

ジリジリと笑顔でにじり寄るクダリから逃れようと、メタモンとハルトはノボリの後ろに身を隠す

ノボリからすれば、事情もわからない自分を壁に攻防を繰り広げられても迷惑なだけである

眉間の皺をそのままに脳内で、本気でメタモンを心配した先程の自分に少し同情を始めていた

そんな思考をクダリの無邪気な

「犠牲になんなかならない!ちょっと子供作ってみるだけ 」

というセリフが見事にぶっ壊した

「?!」

ノボリの間違いで無ければハルトは男であるし、女であったとしても子供は「ちょっと作りますね」で出来るものではない。もちろん子作りにメタモンは使用されない

思わずノボリが自らのコートにしがみつく2人を見下ろすと、ハルトは無言で必死に首を左右に振っていた

瞠目したノボリと震えだした2人を見ながら、クダリは楽しそうに続ける

「メタモンって、性別のないポケモンの卵も作れる」

だから、ハルトとの子供も作れるかもって思った

背景にお花を散らしながら無邪気に微笑むクダリとは対照的に

「あんなこと言うんです助けて下さいノボリボス!」

とハルトは今にも死んでしまいそうな表情だった

「クダリ、いい加減になさいまし。ハルトもメタモンも怯えております…無理矢理に行なっては嫌われてしまいますよ」

こくこくと頷く2人をクダリが笑顔のまま見つめることしばし

「…ハルト、僕のこと嫌い?」

「…………?!」

『………!』

どうやらクダリは新たなる作戦を泣き落としに決めたらしい

ノボリは呆れてものを言う気も失せたらしく黙っていたが、ハルトには効果的面らしく怯んで慌てふためきだした

意味もなく唸るトレーナーにメタモンが元の姿に戻り一喝入れ、我に返ったハルトが叫ぶ

「だ、だだ騙されませんよ!それと俺とメタモンの貞操は関係ないです!」

「ちっ。なら仕方が無い。力ずく。」

「ひっ!夢クチート!!」

言うが早いか、追い掛けるのを再開したクダリから猛ダッシュで駆け出し逃げるハルト達

取り残されたノボリはしばし呆然としていた。文字通り嵐のようだった

「あれは、なんだったんでしょう」

ポツリと零されたもっともな呟きに返事をするものは誰もいなかった



☆☆☆
どーしてこうなった?!
長い。割にわからん。し、エラかったよ?!←
まぁギャグですたぶん

この後ハルトは美味しく頂かれました。はい。
メタモンは逃げ切ったね←

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