不思議な薬飲まされて

体の何処にも異変はなかった。これは脳に何かしら起きたのかもしれない

「えと、どーしてこうなった?」

『どうしたのカナタ?どこか痛いの?』

「いや、その、なんだ…痛いとこはない。痛くはないから心配すんな。いろんな意味で頭痛がしそうではあるが…」

心配そうなマスカットを撫でると、いつものようにすぐ笑顔に変わる

その奥でレントラーが少し怪訝そうな顔をしたのが見えた

『よかったー』

でもカナタ元気ないねー、ねぇクリーム。とボールから出て眠たそうにしていた紫色に浮遊して近付く緑色

『たぶんこれを飲んでからだよ。』

と手元の物を投げたクリームは、ねぇカナタと同意を求めてこちらを見る

転がってきた空瓶には、ラベルなど無く直接マジックペンでサンプルAと書いてあった

王子様から預かったらしい焼林檎持参の謎の薬を飲んだら、なぜか手持ちの言葉が聞こえるようになったのだ

ちなみに、まだ手持ち達はそれに気がついていないようだ

レントラーは薄々感づいているのか黙っている

『えと、カナタ様…だいじょうぶですか?』

「お前、俺のこと様付けしてたのね」

体毛を撫でると、焼林檎はゆっくりと首を傾げて

『?…カナタ様、あの』

言葉が…?と尋ねてきた。雄のわりに声が高くて美声だったことにこちらは驚いているがどうだろう

焼林檎の言葉に肯定すると、怪訝そうだったレントラーが納得したように頷いて立ち上がる

『やはりな。』

「なんつーの、お前渋いな」

『…、』

歩み寄ってきたレントラーと屈んで視線を合わせると、目をそらされた

なに、照れてんのお前?

『え?どーゆーこと?なんなのレントラー』

不思議そうに俺たちの周りを回り始めたマスカットに

『つまり、これのお陰でこいつは俺たちの言葉が解っている』

とレントラーは空瓶を蹴った

『えー!そうなの?そうなのカナタ!』

「あー、そうだな」

マスカットは無意味にわ!わ!と叫んで飛んでいってしまった。だいぶ興奮してるらしい

服の裾をツンツン引かれ、視線をおろすとクリームが隣に来ていた

『ねぇカナタ、これからずっと話せるの?』

「いや、恐らくは薬による一時的なもんだ。もって今日中だろう」

空瓶をつまみ上げるとクリームは残念そうにそっか。と呟いていた

なんだこいつ可愛いな

立ち上がって軽く撫でてやると、恥ずかしそうに身をよじっていた

レントラーが呆れたように笑う

『とても残念です…。折角カナタ様ともお話しできるかと…』

「そーいや焼林檎はずっとN様っとこ居るもんなー。俺と話してるといつもは焦れったいか?」

『いえ、あまり変わりません。』

焼林檎は控え目にくすくすと笑った

カナタ様と言葉は通じなくても、カナタ様は私たちを考えを大方理解して下さいます

『ただ、私達が心配な時、力になりたいと思うとき、言葉は大きな壁となります』

ほんの少し俯いた焼林檎に、皆が同意するように頷く

「お前ら…」

少し涙腺が緩む。俺なんかに付いてきてくれるばかりか、こんなにも

『ずるいー!焼林檎ばっかりずるいよー!』

「ぶち壊しだよお前」

背後から突進を受けよろけたところを、焼林檎が支えてくれる

お礼を言っているうちから俺の腕を引いて

『ボクだってカナタとお話ししたい!』

と喚くマスカットの保護膜を軽く叩く

「お前ね、少し落ち着け」

むくれたマスカットに追い打ちをかけるように

『子供だね、マスカットは』

とため息を吐いたクリームが言うと、レントラーは冷静に今に始まった事でもないだろうと呟き立ち上がる

なにをー!表でろー!と煽るマスカットを無視してレントラーは俺を見た

『…まぁ折角だし、言っておいてやる』

「ん?なに?」

『俺を産んでくれてありがとう』

一緒に連れてきてくれてありがとう。

少し表情を緩めたレントラーは、穏やかにそう告げた

『ボクも!ボクもカナタと一緒にいれるの楽しいの!ありがとう』

『もちろん僕も。ありがとう、カナタ』

『カナタ様…感謝しています』

手持ち達がみんな、笑って伝えてくれた。負い目だらけで逃げてばかりの俺に…

「こちらこそ、ありがとう。」

本当にありがとう。

こぼれてきた涙を拭うと、カナタは本当に泣き虫さん。とパートナーが笑った



☆☆☆
N「あ、こんなところにいたんだ焼林檎に頼んで薬渡したんだけど効き目はどうだt」
カナタ「空気読めし」


☆☆☆
スピカ様ー!リク感謝ですっ
スピカ様へ私とカナタから愛を込めて!
「あー、その、なんだ…ありがとな。楽しかったよ」

[ 168/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -