探索と変人達
暗闇の中をほぼ手探りにて進むことしばし、人の声が聞こえライトを消す
遺跡の研究に来ている団体か不思議な力をもらいに来たサイコ軍団かは知らないが、出来れば関わりたくはない。
一般の観光客が入り込める程度の場所はとうに過ぎていた
デスマスを蹴散らしていたマスカットを戻し、レントラーのボールを投げる
『---。』
「悪いな、道を探ってくれるか?」
レントラーの瞳だけが暗闇に僅かに黄金を射し、ゆっくりと瞬く
何も言わずに手首に当てられた尾を掴むと、砂の上を音も立てずに歩きはじめた
レントラーには物を見透かす能力があり、暗闇だろうが障害物であろうが視界を遮るに値しない
時折聞こえる人間達の声は壁越しのものらしく、恐らくこの屈強に見える石の壁は想像よりも大分薄いのだろう
所詮昔の建造物だ、今と比べれば建築技術も劣る
「出来たらこのまま誰にも会いたくないな。」
『---?』
「大体こーゆーとこに来る奴らは、ろくな奴がいないんだよ」
俺を含めてな。とレントラーに言うと、納得したように頷いていた
お前、いくら負い目があると言っても怒るときは怒るぞ
手に持った尻尾を軽く引く。
後ろ足で砂をかけられた気がするが無視だ
歩幅を調節しながらレントラーに続いていく
文献によれば祭壇は地下に存在したらしい為、下る階段を探す
砂に埋まってなければいいのだが…
レントラーの歩が止まった
『---。』
「なに?ここになんかあんの?」
周りを確認してからライトをつけてみる
一見何の変哲もない壁が目の前にあるだけの、行き止まりだ
ただ、レントラーには物を透視する能力がある
俺には何もない壁でも、こいつには何か見えているのかもしれない
よくよく視線を辿ってみれば、一部の壁だけがやけに風化してみえる
試しに押してみると少し壁の一部が窪み、どこかで何かが始動するようにガチャリと音が聞こえた
連動するように音が近付いてくる
これで壁が動いてぺしゃんこ、なんてオチは無いよな…
なんの躊躇もなく押して置いてなんだが、今更怖くなってくる
レントラーがやけに呆れた目をしているのが、暗闇の中でもはっきりと感じ取れた
ガコン。
何かがはまりこんだような音と共に、目の前の壁が新たな道を開く
「可動式迷路…なんちゅうイジメ」
『---?』
「いや、気にしないでくれ」
間抜けを見るような目のレントラーの尾を再び手に、隠し通路に入る
まぁ大事な儀式を行う祭壇にあっさり入れるわけないし、そんな都合良くも行かないだろう
「変なの来る前に行こうぜ」
『---』
お前が変なのだろと言わんばかりのニュアンスの鳴き声だったが、無視しよう。それがいい
☆☆☆
「遺跡パワー!遺跡パワー!」
「フヒヒヒ、古代の未知の力…」
「ふぉぉぉ!なんか流れ込んでくるぅぅううぅぅ」
「なんかバトルしてぇ!無償にバトルしてぇよ!」
『(…まさしく変な奴らが壁向こうにいるな)』
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