創造を愛して

満月を背景に浮かび上がる姿を見る

ビルの聳え立つ夜空を従えたそいつは、確かにこちらを見ていた

俺は私的な理由でポリゴンやその進化系が嫌いである

あと、ゴルーグなんかも得意でない

俺に負い目があるのが悪いんだとはわかっている。ただ、どーしても好きにはなれないのだ

クローンポケモンや一部のトレーナーが行う孵化作業、改造ポケモンが問題になったのは一度や二度ではなく、何度も何度も社会問題となり取り上げられるが無くなりはしない

昔から人間の私欲のために利用されるのはか弱き立場だと決まっている…

ポケモンは人間の道具ではないのに、勝手に産み出され指示に従い生きることを強いられる命が確かにある

「なに、お前はそーゆーののうちの一匹ってわけ?」

相手の放ったダークグレーの球体をパートナーがサイコキネシスで防ごうとしたようだが、力量が違いすぎるのかほんの僅かに軌道を逸らすだけに終わる

クリームが身を挺して庇ってくれなければ、ただでは済まなかっただろう

特防を高く育てており特殊攻撃に強いはずのクリームが、そうとうダメージを負ったらしく低く呻いた

直撃していたらと思うと、頬を嫌な汗が流れる。確実に殺しに来てた

焼林檎がさざめいたが軽々と技を相殺し、飛びかかったレントラーの牙も半身を引いて避ける

強い。

ボールホルダーに触れた指先が震えた

白い体躯を空に走らせ、そいつは空気をうねらせる衝撃波を放つ

マスカットより強力なサイコキネシスは、手持ち達を蹴散らし俺の目の前ではじけた

「…っ!」

『---!』

爆風に巻き上げられ後ろへ吹き飛ばされる

俺の飛ばされる先に回り込んだ焼林檎が受け止めてくれ、後ろの建物との激突を防いでくれた

短い間に何回も死にかけたくないものだ。頬の汗を拭い、後ろに

「ありがとな」

と礼を言い地面に足をつく

白いポケモン…ミューツーは俺を見据えていた

『何故造った。何故産んだ』

「俺に聞いてくれるな」

『答えろ!』

シャドーボールが耳をかすめ、後ろの建物を一部破壊する音が聞こえた

短気な奴だ。

手持ち達が俺の周りに集まり、守るようにミューツーの前に立ちはだかる

俺が造った命達。俺の手持ち達

「俺が造ったのは、強さを欲したからだ」

『そいつらもか』

「そうだ」

マスカットとクリームが心配そうに見上げてくる

「許されたいだなんて思わない。償おうなんてしない。」

ただ、一緒に居ることを許してくれたなら、見限られるまで過ごしていたいと思う

マスカットは嬉しそうに笑い、クリームはすでにミューツーを見ていた

焼林檎も珍しく声を出した

レントラーは胸を張り、尾を立てる

手持ち達は、俺といることを望んでくれているように思えた

自惚れかもしれないが、少し、こんな時なのに嬉しかった

『……。』

ミューツーはしばらく無言だったが、やがて構えを解いた

お前はずるいな。と言い残して、どこかへテレポートしてしまった

「そう、俺はずるいんだ。」

嬉しそうに鳴いたマスカットを抱え、手持ち達を戻す

目指すはポケモンセンターだ

「そーいや、あいつは誰に造られたんかね。ミューツーって名乗ってたけど」

『---?』

「そして、なんで俺を知っていたのか。謎は残ったな」

答えを知りもしないだろうマスカットは不思議そうに首を傾げていた

ボールホルダーで一つのボールが揺れた



☆☆☆
最初はどうであれ
今は愛してるよ
愛してくれてるでしょ?
とても好きって言ってくれるでしょ?
だから笑って?ね?

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