王国の労働者共

これはどーいう事でしょう神様

館内の水槽が割れて海水が流れ出し水浸しになっています

まぁ、まぁ良いでしょう

防犯ガラスでは比にならないほど頑丈で分厚いアクリルガラスが割れているのは全然おかしいことですが良いとしましょう

魚が歩いてます。テクテク歩いてます。魚が!

実は蟹です海老ですダイオウグソクムシですなんてオチでも、海底を鰭を使って歩くタイプの魚でしたー!なんてオチでも、セイウチの見間違いか…なんてオチでもありません

大半が二足歩行で歩いていました

尾鰭を足のように、大きな胸鰭を手のようにして歩いています

魚の個体により大きさも違うようですが、大体は人間位の大きさで人間的シルエットをしていました

中には人魚のように下半身が魚のままだったり、犬のように四つん這いで歩いているのも居るには居ますが、それでも充分有り得ないでしょう

あははは、私ナガレさんは、疲れのあまり気が狂いましたかね?

よく見ると魚どころか、海藻や珊瑚や磯巾着、さらにはヒトデや海牛など、本来手足や頭部の無いものも歩いてたりします

なんですかこれ宇宙からの回し者達ですかね?それとも突然変異?一晩で懐き進化しましたってことですか?

おや…?魚達の様子が…てってーてってーてってーてんってー♪

脳内に響くゲーム音をそのままに、そっと水族館から出てイサナさんのもとへ走ります

変な汗がたくさん出ていました

海風に煽られ、額に前髪が張り付きます

遠目にも見えるイサナさんの姿に、何故か泣きそうでした

鯨の大きな背中にこんなに安心する日が来るなんて!

波を割る背中が足音を拾ったのか、せり上がってきました

「イサナさん!イサナさんイサナさんイサナさん!」

「なんだ、ナガレ」

「さ、さかな…魚が歩いてます」

「あぁ」

「あぁ。じゃないんですよ!!」

イサナさんは平然と冷静に頷いただけでした。なんだそんなことかと言わんばかりに

水族館が謎の生き物達に乗っ取られているんですよ?!海の生物を模したエイリアンの侵略です!地球滅亡です!とまくし立てても表情一つ変えません

「何でそんな冷静に!嘘じゃないんですよ本当なんですよ?!」

「俺がやったからな」

「は?!ミュータントとお知り合いですか?」

「……。」

ものすっっっごい馬鹿にした視線を頂きましたよー。あはは冷静になればこのクジラだってオカシイ存在でしたね

人語を解すクジラって、あいつらともろ仲間じゃないですか。寧ろ私が孤立してるじゃないですか

「あの人達はイサナさんと同じように呪いを受けた人間さん達なんですか?」

「いや、違う。あいつらはただの魚だ」

これに触れた奴は姿を変え人語を解すようになる。

そう潮を噴いたクジラを見上げます

やっぱり、鯨は体内から水を出しているわけじゃなかったですよね。特殊な力を吐いていたと言うことですか

「あ、じゃあ従業員がいらないって言うのは、彼らが居たからなんですね」

そうだな。と頷いたイサナさんに一瞬納得し、我に返ります

「って違いますよ、何なんですかその力」

ものすごい勢いで順応しそうでしたが、そもそも違うのですよ!なんですかその展開!

「どうやら俺をこの姿にした呪いの力らしい」

クジラ曰わく、海でしばらく暮らしているうちに体内に流れる呪いの力を感じ、色々試しているうちに多少使い方を理解したとのことです

「あはは、なんちゅーマジカル的展開…じゃあ仮に魔力としましょう。呪力だと恐いし…イサナさんの魔力に触れると魚やら水族館の生き物が擬人化して自ら働けるようになるわけですか」

「そうだな。逆に人型から魚に戻すことも可能だ。だから、お前が魚共に指示を出しそれぞれの環境の整備を出来るようにしろ」

それが出来次第開館し客を呼ぶ

勢い良く吹き上がった潮が降りかかります

「…………てか、もしかして私一人で全部の指導を?」

「昨日伝えただろう」

「あ、はいそうですねそうでした」

クジラはさも当然と言わんばかりでした。あはは、刺身になれ

「鯨に言ってもダメだと思いますけど、労働基準法ってご存じですか?」

「あぁ?文句なんて無いよなナガレ」

「はいありませんごめんなさいごめんなさい」

今更ですけど、魔力で魚にされたりはしないんですよね?ね?



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