それは確かな愛である

世界最大のネズミことカピバラである私は、恋をしております!

「一角さーん」

「ん?あぁ、ナガレ殿か。どうかしたか?」

しゃっきり伸びた背中を見つけて駆け寄る私に気がつくと、一角さんは背の小さな私に合わせて少しだけ身を屈めてくれた

同じ高さで視線が絡み合う

遠くで女友達が応援してくれる声がした

今日こそ私は言うのです!

「一角さん!私と齧歯類最大の子供を産みませんか!」

一角さんの目を見て、何度か練習した言葉を出す

噛まずに言えた!

一角さんはしばらく呆気にとられたみたいに口をぽかんと開けていた。大きなお魚が入りそうだ

ゆっくりと片手を上げて、何かを制すように私の顔の前で止める

可愛いミトンが目の前で揺れる

「……。すまないが、」

「はい」

「私の間違いでなければ、ナガレ殿と私は種族が違うのではないか?」

「そうですね!」

一角さんは、珍しく眉間に皺を寄せていた

腕がおろされる

「つまり、誠に申し訳ないが齧歯類最大の子供を産むことは出来ない」

本当にすまない。しかし、その申し入れ感謝する!と、物凄い勢いで頭を下げる彼を必死に止める

「一角さん一角さん。通常なら、ですよね」

「……?」

普段ならコミュニケーションすら出来ない私達は、今は魔力を受けて人の形を模している

種族がどうのは今はあまり関係ない

「それに、聞きたいのは結果ではなく過程です!」

首を傾げていた彼の肩をつかみ、顔を寄せる

覗き込んだ一角さんの目には、私の顔がいっぱいに映っている

「ナガレ殿!何を伝えたいのか、ハッキリ言いたまえ!」

「ではハッキリと。好きです!誠実で真っ直ぐなあなたが好きです!」

齧歯類最大の子供を産みましょう!ともう一度伝える

一角さんはいつものように素敵に笑って、私の脇の下に手を入れて持ち上げてきた

足が地に着かず胴が伸びきっているという普段ではあえない状態に不思議な気持ちになるが、軽々と私を抱えて嬉しそうな一角さんを見ていたらどうでもよくなる

「ナガレ殿!君の気持ちは良くわかった!だが、齧歯類最大の子供も捨てがたいが、私はナイトスピリッツと立派な牙を持つ子供が欲しいっ!」

「一角さんが望まれるなら喜んで!」

一角さんに手を伸ばすと、腕の中に抱き込まれた

暖かくて幸せです!

「しかし、一つ聞いても良いか?」

「はい、何でしょう?」

床にそっと降ろされて、一角さんを見上げる

いつもハッキリきっぱりな彼には珍しく、煮え切らない態度だった

「ナガレ殿に好意を持たれることはとても嬉しく光栄に思う。だが、」

その、女性にこのようなことを聞くのは好ましくないとは思うのだが

「何故私なのか、教えてもらえないだろうか」

また一角さんの眉間に皺が寄る

そっと眉間に触れて皺を伸ばすと、軽く肩を揺らしていた

変なことをしただろうか

「そんなの簡単ですよ」

背の高い一角さんに視線を合わせるために背伸びをする

彼の吐息が近くなる

「異種族とわかっていても、好きになってしまったんです。それだけですよ」



☆☆☆
齧歯類最大の彼女。
一角さんってなんだかんだで良い旦那になりそうだよねぇ

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