王国独立宣言
初めて現場に足を踏み入れ、思わず興奮して叫んでしまうところでした
「うおおぉ!すごいですね!」
「そーだろナガレちゃん!」
心からの素直な称賛に、自慢気ににやりとお偉いさんが笑いました
つられてか、周りの筋肉隆々のお兄さん達も嬉しそうです
逞しいお兄さん達にも感嘆の声をあげてしまいそゲフンゲフン…とっても眼福です。
海洋生物どころか海水も入っていない巨大水槽というのは、中々新鮮です
だからと言って殺風景なわけでもなく、イサナさんのお客様の目を飽きさせない工夫がすでに伺えるようでした
剥き出しの岩肌や型どりされた色とりどりの珊瑚が埋め尽くす水槽に、真っ白な砂場、木々が植えられ再現されたジャングルなど、まるで様々な国を切り取って持ってきたかのようです
四角く無機質な水槽など一つも無く、テレビ越しに見る水中の世界そのままです
ついつい目を奪われ足を止める度に、説明をして下さる現場監督さんが笑いました
笑顔の素敵な方だとわかる仲になれて良かったです。危うく鯨のせいで険悪になるところでしたもんね!
アマゾン付近の魚を展示する予定の水槽ではスコールが降る演出があったり、川魚を展示するコーナーには小さな滝を作ったり、その魚の生態に対応した環境を作り上げるのに苦労したんだとか
本当に悔しいのですが、イサナさんの知識と実行力は素晴らしいものだとも思います…私を介してでなければもっと素敵でしたね
気が早いですが、今から魚達が戻ってくるのがとても楽しみです
魚達が空飛ぶアクリルの通路、アシカやアザラシが床下から顔を出す不思議な穴、海洋生物を輝かせる様々な色彩のライトアップ、圧巻される超巨大水槽…何をとっても話題性ばっちりで期待度も高いです!
館長の無茶ぶりを成し遂げつつある建築の皆さんに頭を下げながら、改装途中の館内を回ります
胃に穴がどれだけ開くかと思いましたが、ここまで形になってくると苦労したかいがあったなーと何だかしみじみしてしまいそうです
クジラと出会ってそんなに時間経っていないように感じるんですけどね、あはは海に黒いのいるんですもんー
あと一ヶ月もすれば改装やその後片付けも終わり、新装開店…ではないですけど、魚達の展示も出来るようになるそうです
イサナさん曰わく、今後のメインになるような海洋生物の捕獲も行うそうです
あーゆーのって捕獲するものではなく、ほかの水族館で繁殖した子を貰ったり傷ついた子を保護するのだと思いましたが…
まぁ館長の決定事項なので捕獲されるのでしょう。南無三
現場監督から現在の経過も聞けたので、彼らと別れて海へ向かいます
最近は潮風の独特の香りや肌のべた付きにも慣れましたね
頭から海水を被ったり髪の毛が可哀想なことになるのにも慣れました
癖っ毛なめるな!
イサナさんは私に気が付くとご苦労とだけ言いました
大きな目が早く報告しろと告げていました。労いが薄いです…
「あと一ヶ月もすれば魚達の展示が出来るそうですよ」
そう伝えると、
「一ヶ月か…」
と呟いていました
「漸くスタート地点ですね、イサナさん」
「あぁ」
「あ、イサナさん!呪いが解けて戻っちゃう前に、背中に乗せて下さい!」
「……。」
睨まれましたが、労働料金です!と言うと海に沈んでいきました
乗ってみたくないですか?クジラ
☆☆☆
「イサナさーん!一回!一回だけで良いですからぁ」
「………………一回だけだからな」
(*゚∀゚*)
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[mokuji]
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